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ファイティング・ロッダーズ
相原 元司
ESSAY: Shuji aihara


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何故カジキなのか。
それも大きいやつ。
普通なら、130LBのフルタックルで狙う、ビッグなやつをプラグのキャスティングで狙う。それもラインはモノフィラの20LBで。当然スタンダップでハーネスも付けない。 アングラーに有利なのはウエストジンバルだけ。


2004年9月。場所はオーストラリア、ケアンズ沖。 リボンNO.10リーフからリザードアイランドをティージングしている時に「ヤツ」は出た。 山の様なウネリの中ティーザーを追っ掛けて来る。推定650LB。

デッキハンドがティーザーを引き抜く。 トビペン 18cmマーリンモデルをキャスト。「ヤツ」が見ている。 ソフトボール位の大きさの目でジっと、トビペンを見ながら「キラ・キラ」と輝いているブルーの胸ビレを広げて追って来る。 トビペンにアクションを付ける。 だんだん距離が短くなってくる。

尾をゆっくり動かすだけで、どんどん距離が近くなりトビペンにのし掛かる様に喰わえ込んだ。

目一杯「フッキング、フッキング、フッキング」確かな手ごたえでセットフックしたと思った瞬間「ドカーン」と650LBの巨体が10メートル位の所でジャンプする。

それはもう、見事の一言。こんなに楽しくてエキサイティングな釣りをトローラーの人達だけに楽しませてはいられない。 やはり、デカイ魚はそれだけで美しい、感動する。

今度は、一気に走った。物凄い勢いでラインが出ていく。 キャプテンのビルが抜群のテクニックで追っていく。 追って、追って、追いまくる。それでもラインは出ていく。 私は波を被りながら、ひたすらラインを巻く。やっと走りが弱くなったが一気に600メートル位ラインを出された。

今度は戦闘開始である。 一定のテンションを掛け、ひたすらリーディングする。小型のカジキであると釣り師がサイドプレッシャーやダウンアンドダーティーなどを自らのロッドワーク、テクニックで魚とやり取りするが、このクラスになると人間が行っても効かない。 キャプテンが魚の進行方向を見ながら船でサイドプレッシャーを掛けて魚を誘導する。



なんだ、それじゃ釣り師のテクニックは無いと思うだろうが、大荒れの中スタンドアップでリーリングするのは、簡単そうでなかなかできるものではない。何度も何度も波を被りながらファイトをし、中でも巨大な波に突っ込んで行った時は、後ろでデッキハンドが咄嗟に腰を押さえてくれたが、その波に突っ込んだ時は私とデッキハンド2人共に吹飛ばされた。船のデッキに溜まった海水が抜けきれずに、膝までつかりながらファイトを続ける。

マーリンがだんだん近付いて来るが、また数百メートルラインが出されていく。




何度となくこのような攻防が続いて、だんだん距離が短くなって来る。 風がだんだん強くなり、一定の速度で泳ぎだす。もう少し。あと一歩。となるが、だんだん辺りは薄暗くなって来て、風、波ともどんどん強くなり、さすがのビル・ビルソンももうこれ以上は危険と言う。ラインを切れと言う。キャプテンの指示には逆らえない。涙を堪えてラインを切ろうとする。しかし自分で切ろうとするとなかなか切れない。



リールのドラグをフルロックしてラインを押さえて切った。 4時間強の熱い戦いは終った。涙が溢れて来た。 私の初のリザードアイランドでの釣りは壮絶なものとなった。

このサイズのマーリンがトップで喰って来る。それもティズして寄せて、目で見て追わせて喰わせる目の前で「ドカーン」とジャンプする。本当に一度経験してみなければまったく分からない世界である。次元が違う。逆に一度でも経験してしまったら止められなくなる。

何もかも犠牲にして、年に一度の、この釣りに命を掛ける。 これからも出来る限り、挑戦する。


相原 元司






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