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トップノッチ
ESSAY: Top Notch


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イギリスの競馬文化にはユニークな伝統、歴史的遺産、式典などがあり、中でも「レディースデー」は熱心な競馬ファンでなくてもイギリス中が楽しみにするイベントで、レース以外に女性のファッション、特に帽子が注目の的となる。


どんなドレスを着て、どんな帽子をかぶり、どんな風にお洒落をするのか。
そのお洒落をどんな言葉で褒めて、どんな風にコミュニケーションをとるのか。

ワイングラスを片手にレースを眺め、一人が歌えば皆楽しく歌いだし、楽器を奏でれば自由に踊りだし、競馬を通じて楽しみの幅を広げているのだ。


ここでは見知らぬすれ違いの人でも気軽にジョークで声を掛け合う。

「まだお金は残っているかい?」
「負けるのを楽しんでいますよ。」
「今のレース、誰が勝ったのかわからなかったけど派手に喜んじゃったわ。」
「あの落馬した騎手は私の帽子に見とれていたからよ。」

こんな感じだ。


3レースほど終わり、知らぬ地で真剣にデータ分析をし、惜しい負けの続く自分がなんだか嫌になってきた。
そんな僕に、同じテラスにいたイギリス人女性が、
「素敵な名前の馬に賭けたら、£100が£3000になっちゃったわ。」
などと言って、負けた僕の気持ちを軽く吹き飛ばした。


なぜこの伝統は300年も続いているのだろう?

着るものなど競馬には何の関係も無い。もっと気軽なジーンズでも何でも良いじゃないか、という考え方もあるかもしれない。しかし、楽というものは求めるときりが無い。むしろそこに「ルール」を作りそれを逆手にとって楽しむことで、さらに面白味が増しているのだ。

そう、「ルール」があるからこそ、伝統は続いているのだろう。


「トップウォーターでサカナを釣るということ・・・」

この遊びに出逢い、僕の人生がそれまでの何倍も明るく、楽しく、そして豊かなものになった。それは、この遊びに自分で決めた「ルール」があるからであり、その「ルール」があるからこそもっと深く考え、もっと深く感じ、そして想像力を膨らませて生まれた感性やインスピレーションが僕の人生の多くの場面に役立ってきたからだ。

「トップウォーターでサカナを釣るということ・・・」


翌日、カナールという運河で竿を出した。しかしこの運河には多くの細い船が行き来していて、何度も釣りを遮られてしまった。
船主に聞いてみると、彼らはこの船に住んでいるという。

何ヶ月、何年もかけて一つ一つの町を感じながらのんびりと旅をしているのだ。こんな細くて狭い船に何年も住むことは、とても不便で大変だろうとも思うが、おそらくこの時間に制限の無い余裕たっぷりのゆったりとした時間の中でなければ感じることの出来ない何かがあるのだろう、とその船主の顔を見て感じた。


旅の途中、スタッフォードという田舎町で1653年に“The Complete Angler”[釣魚大全]という本を書いた「アイザック・ウォルトン」の住んでいた家に立ち寄った。

350年以上も前に書かれたこの本は、釣りだけでなく故事伝承・歌・随想なども随所に織りまぜられており、何か僕らの釣りの原点を見たような気がした。

「トップウォーターでサカナを釣るということ・・・」

僕はこのかけがえのない釣り文化を教えてくれた先人に対する恩を忘れずに、共に感じ、共に楽しみながら次の世代へと伝えていきたい、そう思った。



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