今思うと、ブラックバスと言うサカナは誰にでも簡単に釣れる魚だった。
だから、「どんな風に釣るのか?」釣果よりもそんなことにこだわり、楽しみの幅を広げる余裕さえあった。しかし時代は変わり、関東では特にここ数年で、めっきりサカナが釣れなくなってきたように思う。だからといってこれまで築いてきた自分のスタイルはもはや変えられない。いや、そうではなくて「変えたくはない」というのが正直な気持ちだろう。
6年程前までJUNと共に散々良い思いをしたあの野池は今、どうなっているのだろうか?
僕らは今、あの思い出の地でサカナを釣ることができるのだろうか?
野池へ向かう車の中で、二人は作戦を立てた。
まずJUNが遠方からキャストマグナムのピンポイントで狙い撃つ。その後、静かにぎりぎりまで近づいて、狙いきれない奥の奥をトップノッチがショートマグナムで狙い撃つ。これで駄目なら納得してあきらめよう。そう決めた!!
思い出の地へ向かう僕らの気持ちはいつもより高揚していて、話も盛り上がった。
「あの頃はもっと燃費の悪い車でガソリンばらまいていたね。」
「道具も意味なくもっとたくさん持ってきてたのに・・・」
「いやっ、意味あるの。みんなで見せっこして自慢したかったの。」
「て言うか、スーツ着て釣ってたこともあったよね。」
「寝ないでやってたもん。」
まだそんな話をする年ではないのだけれど、サカナが釣れなくなったことでなんだか時代が一つ、変わってしまったんだよね。
野池に着いた僕らはあの頃と変わらぬ美しい景色に安心して、秋晴れのすがすがしい朝日を浴び、それだけで気持ち良くなっていた。(昔は我先だったのに・・・)
そして、ゆっくりと準備をして船を出した。
「この竿、投げやすッ!」「グラスの竿使えなくなっちゃいそうだね」
そんな話をしながらも、キャスティング精度が明らかに良いこの武器で結果はすぐに出た。
作戦通りにJUNが遠距離からオーバーハングの下へ、プロトのシングルスイッシャーをピンポイントでキャスティング。
一番奥から引いてきたルアーに無警戒のバスが一気に食らいついてきた。
いつものことだがJUNは遊ばずにかけたサカナは確実にキャッチする。(僕は手返しでサカナをジャンプさせて、よくバラしちゃうけどね!)
相手にまったく主導権を与えず、一気にJUNのペースでぶち抜いた。
出方もよく、理想的なサカナがあっという間に船の上に横たわり、はい記念撮影。
「相変わらずだね。」釣りのスタイルはまったく変わらない。
そして今度はワンドの奥のまさにショートマグナムでなければ投げられないブッシュの奥へ、ウッドンスマートアレックをオーバーヘッドでキャスティングした。
シングルスイッシャーは横の動きと水中にダイブさせる縦の動きがあるので、スレたバスにはホッツィートッツィーよりもさらに強力な武器になる。
後ろでJUNの余裕の視線が「ここで出さなきゃダメでしょ。」と言わんばかりだった。
ロングポーズのあと、相手に考える間を与えないスピーディーなアクションを50cmほど引いてきたところで絵に描いたように激しく水面が割れた。
近距離のため重さがわからず一気に巻いたが、目の前に姿を現したサカナのサイズが二人の予想を大きく超えていて、一瞬僕らの時が止まった。
「この野池にまだこのサイズがいたのか・・・」
以前は投げていなかった、いや、投げられなかったポイントで、まさにショートマグナムだからこそ捕れた47cmのサカナだった。
改めて二人の気持ちは一つになっていた。
スレたバスを釣るために一番大切なこと、それはキャスティングだと・・・
グラスの竿は使い心地がよくて味もある。そしてルアーを柔らかく演出できるし、なにより使っていて充実感がある。大好きなABUの5000番台との相性も抜群だし、これはもう僕にとって永遠のマストアイテムだ。
しかしスレたバスポンドで確実に捕るということであれば、もっとキャスティング精度が高い、人が投げないようなブッシュの奥の奥までルアーをぶち込める「ボロンロッド」にABUの2500cという組み合わせもいいだろう。
JUNがよく言うように、これからの時代はケースバイケースでこの2つを使い分けることも重要なのかもしれない。
そして、ワンドからでた僕らはすぐに、野池の入り口に一台しかなかった車が5台になっていることに気がついた。
そうだよね。
間もなく野池はにぎやかになり、大人になった僕らは疲れた心身で秋の風を感じながら、2時間ほどで釣りを終え、それぞれの都会の喧騒という現実へと帰って行った。
2009秋、思い出の地。
ショートマグナム、キャストマグナムと共に・・・・・
(2009年10月)
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