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SAURUS > エッセイ > 山田周治 > 房総半島の山の中で、モロコ料理が食べられるようになった
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Tokyo Rod & Gun Club
山田 周治
ESSAY: Shuji Yamada


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モロコ料理といえば、ごぞんじ琵琶湖周辺の名物。いや、最近は、「…だった」というほうが正確かもしれないよ、という話もある。それぐらい、琵琶湖ではモロコが取れなくなってしまったというのだ。ま、その話は別の機会にまたするとして・・・・・


そのホンモロコの料理を、房総半島のど真ん中の山間部、久留里で楽しめるようになった。まあ、料理といっても唐揚げか天ぷらかあるいは佃煮か、まだそんなもの。琵琶湖周辺並みに凝った料理ができるようになるかどうかは、作る側と食べる側、お互いの求め方次第ということなのだろうね。


ところで、なぜ房総の山の中でホンモロコが食べられるようになったのか?理由は簡単。久留里でホンモロコの養殖を始めたからだ。


ご存じの方もいらっしゃるのではないかしら、久留里は上総掘で掘られた自噴井戸の銘水で、ちょっとした名所になっている。休日ともなると、道路際の自噴井戸には、わざわざ東京からこの水を汲みに来る人で、列ができるほどなのだ。
上総掘の井戸は、じつをいうと、稲作の潅漑用に掘られたものが圧倒的に多い。だから、いまはすっかり休耕田が増えてしまったそこかしこの田圃に、上総掘の自噴水が湧き出ている。

この水を使って、地域の再活性のために休耕田を活かすことができないかと考えた篤志家が、県の内水面水産試験所に交渉してホンモロコの卵を取り寄せて、養殖を試したところ、どうやら成功して、地元の有志の農家と一緒に生産者組合をスタートさせたというところらしい。


成功した、とはいっても、まだまだ試行錯誤の段階を卒業するまでには至っていないようで、「苦労の連続だよ」と、篤志家はいっておられた。

せっかく始めたことだし、いまは使われることもなくなっていた貴重な上総掘の水と休耕田の両方を生かせるというのは、地域に住んでいる僕らとしても嬉しいことだから、久留里の名物になるくらいまで育ってもらいたいというのが、まあ本音。

ただ、うまく実を結んで養殖池もたくさんできると、きっとそこから流れ出る水に乗って、魚が小櫃川に入るようになるだろうね。
いまは想像の域を脱しないのだけれど、本流に入ったホンモロコが、もしかするとそこで産卵して増えるようになるかもしれない。つまりいままで小櫃川にはいなかった移入魚(小櫃川にとっては外来魚)が生息するようになるのだから、生態系の変化ということになる。

これは、もしかすると生物多様性の侵害ということになるのかもしれない。


在来種の魚に食害があるわけでもないだろうし、別にいいじゃないか、という考え方もあるだろうけど、厳密に考えた場合の生物多様性理論には、やっぱり反してはいると思うのだよ。

外来種の問題というのは、故意にやるわけではなくても、人間が経済活動をすることに伴って、じつにたくさん発生している。これをどう考えていくのか、気になるなあ。



山田 周治






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