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SAURUS > 釣行レポート > #29 いつか出会う一匹のために ~ 北海道イトウ
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毎日覗いている川の携帯情報を見ると7月にも関わらず例年と比べると水位が下がらず、また水温も比較的低水温になっている。
タイミング良く仕事の都合もつき、北へ向かうことを決めた。


今回もTS90HH-Cを携えての釣行である。
前回の釣行から修正点をさらに加えてのテストであるので良いサイズを掛けたいとの思いが強かった。


天気は相変わらずの雨。
雨雲と一緒にランデブーする。こうまで雨にあたると本当に自分が雨男だと思ってしまう。
本流支流ともに濁りが入り仲間にも半ば呆れられていた釣行だったが私には思惑があった。増水はしているものの急な増水ではなくじわじわと水位を上げていて水位と濁りがイトウの警戒心を解いてくれているのではないかという事だ。言ってしまえば当たり前のことなのだが実際川を目の前にしたときはちょっと厳しいかなと思うほどだった。

今回その状況を観察して私が考えたのはシャローを攻めることだった。
ルアーはシートプスウッド。私の大のお気に入りプラグである。飛距離もベイトタックルでも充分で、何よりきびきびした泳ぎとレスポンスが濁りの中でもイトウにアピールしてくれると思った。足りない分はパールベースのカラーで補う作戦である。



雨で増水した川にシートプスウッドをキャストする。濁りがきつく目視は出来ないけれど、TS90HH-Cを通して軽快に泳ぐ様がはっきり分かる。

シャローから顔を出している草の横をプラグが通り過ぎる瞬間
「ドスン」「ガバッガバッガバッ」
やはりいた明らかに大物イトウだ。


「グングングン」ロッドが何度もお辞儀をする。ラインは5mも出ていない為、重量感がダイレクトに手元に伝わってくる。これだよこれ!これを味わうと今までの苦労も全て忘れてしまう。シャローで大暴れするイトウを決して無理はせずしかし大胆に手前に寄せる。手前での突っ込みにもドラグが出ることなくロッドで上手くいなす事が出来る。

無事にランディング成功して魚体を見るとベイトを大量に捕食しているのか見事なコンディションのイトウである。メジャーを当てると90を軽く超えて96センチ。降り止まない雨の中、写真撮影をこなしリリースすると満足感でいっぱいになった。


これはチャンスだと判断し次は小さな支流が流れ込んでいるポイントに入る。何度も入ったことのあるポイントだがイトウをキャッチした実績はない。いつも対岸ギリギリの障害物を狙っているのだが、今回は前述のメソッドで攻める。丁度開きの部分が核心部のように感じたので少し上流から釣り下る。

流芯をまたいだシートプスにジャークを二回入れると
「ドスン」
またも重量感のあるアタリが来た。待ってましたとばかりに合わせを入れると、ラインが上流に向かって走っていく。中々のトルク感である。ロッドを上流側に倒しサイドプレシャーを掛けるとその場で止まったイトウが大暴れする。これも良いサイズだと確認できる。首振りを繰り返すイトウをTS90HH-Cが柔軟にかわしてくれる。

激しい首振りを抑えると今度は下流にゆっくり下り始めた。流れの重さも手伝って良い引きであるがこのポイントは下流に倒木が沈んでおりあまり下らせる訳にはいかない。今度は下流にロッドを倒しイトウの頭をこちらに向けるようにトルクを掛ける。
「グングングン」
最高に興奮する引きだ。しかしTS90HH-Cが全く負けていない。



ロッドのトルクに任せているとイトウの頭がこちらに向いた。後はイトウを驚かさないようにある程度巻き込み、則さん直伝自動車バックで浅瀬に寄せる。ややスリムな94cmだった。

おいおいおい出来過ぎだよ。


無理やりスケジュールを明けて平日釣行をしたかいがあったと思いつつ、仲間にメールを打つ。仕事中の皆には申し訳ないが最高の気分である。もう何本か出ないかとキャストを再開するが今度は川は沈黙したままであった。

場所を思案しながら車を走らせていると、また一本の支流が目に付いた。平水時には本流も浅すぎてポイントにならない所でロッドを出したことは無かったのだが、勢いに任せて入ってみた。

岸が木に囲まれていてキャストするのも自由がきかないが駄目もとで投げる。ここでデカイのをかけても捕れないと思っているとまたもや明確なアタリ。また90オーバー?そんなに上手くはいかず60弱のイトウだった。



雨は全くやまず川は確実に増水してきている。夕方もロッドを振るが何も反応はなく、ゆっくり温泉に漬かり車中で一人乾杯する。
最高の一日を振り返って満足感に浸っているうちに深い眠りに落ちていった。


翌日川を見ると若干減水していて透明度も上がっている。前日からの川の変化に作戦を変更する。
流芯についたイトウを狙おうと場所を決める。ルアーは鉛張りニューシートプス13.5。まだ水位が高いのと濁りを考慮してフックにも鉛を巻く。これは沈めるためというよりダウンで送り込むときに少しでも筋から外れないように攻める為である。

キャストを繰り返すが反応はない。
昔のイトウ釣りの書籍を見ているとイトウ釣りは田んぼを耕すように釣れとあったが、今回のメソッドの目的はイトウを水面に誘い出す事である。流芯に上手く乗せながらジャークとスライドで誘いを繰り返し1投毎にイトウとの距離が縮まっていくことをイメージする。

重々しいアタリとともにドラグが鳴る。
「ジッジッジーー」
流れに乗ったイトウが身を捩じらせながら下流に下る。決して無理はせずロッドで上手くコントロールする。流芯の向こうに入られると厄介だ。
「グン、グン、グン」心地よい首振りが伝わってくる。
上手く手前に寄せたところで無事ネットイン。スレンダーな86センチだった。思惑通りの一本に満足しつつも次を狙う。
全く同じパターンで再びロッドが曲がる。重量感はそんなに無いがスピード溢れるイトウでジャンプを繰り返す。数度のジャンプの後激しい突っ込みを何度か見せるが勝負は見えた。先ほどより若干小さい82センチだった。



一日半の釣行で充分満足した私は帰路につく事にした。
釣りをしている間降り注いだ雨はすっかり上がり雨雲が遠く海の向こうに見える。青空の海岸線を窓を開けて走ると、則さんがイトウは魚じゃないまるで獣だよと言っていたことを思い出す。まさにフィッシングじゃなくハンティングと言ったほうがぴったりだと思った。


ただハンティングと違うのは命を奪う行為ではないという事だ。
海岸線の心地よい風を浴びながらまた次の魚のことが頭を支配していく。良い釣りが出来た今回も私の思い描くイトウには届いていない。

色々な釣りをやってきた。しかし私にとってこの川のイトウ釣りは特別である。
ジキルとハイドのように表情を変える愛すべき川、そんな川でたくましく生きるイトウ、川で知り合った仲間、アンバサダーとザウルスロッド、そのどれもが大切にしていきたい私の宝物だ。

そのザウルスロッドにメーターオーバーイトウ専用ロッド 「THE EXPEDICION」TS90HH-Cが加わる。メーターを遥かに越えるイトウを狙う為に生まれたロッドである。イトウにもライトタックルで挑む人もいるだろう。きっとそんな人には理解できないロッドである。常識を超えたイトウとも闘える国内初のイトウロッド。
いつか思い描くあのイトウと闘う時、このロッドが私に喜びと感動を与えてくれるはずだ。


そしてまたその先へ

イトウ釣師の夢は一生終わらない。

(2009年 8月)

ザウルス・アソシエイト 岩井 淳利




Angler Photoアングラー ザウルス・アソシエイト 岩井 淳利
デカいイトウを釣るために週末だけの北海道釣行をくり返す情熱のベイトキャスター。客観的な状況分析と何事も譲らない強いこだわりでビッグトラウトだけを狙い続ける。「納得のいく、たった1尾だけでいい」と言い切る生粋のイトウ釣り師。東京ロッド&ガンクラブ所属。






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