一昨年秋頃、友人の粕谷君から、PEライン専用ロッド開発に協力してくれと言われ、正直戸惑いながらも引き受けた。PEラインは以前から使用しており、自分なりに特性は把握していた。PE使用の理由は、感度と飛距離だ。ライン自体の伸びが殆ど無い為、ボトムコンタクトや前アタリも感じ取れる。ライン強度が有る為1号程度(16~18ポンド)で、かなり飛距離がだせるので、大河川や移動できない場所では広く探る上で有利と思い、私はシーズン中、ガイドが凍結しない限りPEラインをメインに使用している。
ロッドの完成度は高かったのだが、ソフトティップ、ロッドの軽さ、細さはそのままで、ベリーからバット部分の強化をお願いした。20gのバイブレーションルアーをジャークした時に、ベリー部分に不安が有ったのと、不意の大物にも対処出来るバットが欲しかった。かなり無茶苦茶で我儘な要望だったかもしれない…
改良されたロッドが4月後半に、
「出来れば、今月中に釣って感想を聞かせてくれませんか」
と粕谷から手渡され、「えぇ~!!なにそれ~!!」と思いながら、翌朝から友人達と開拓を始めた河川でテストを開始!キャスト始めてすぐ「やばっ!凄くイイ感じだ!!」キャスト時のティップのブレが少なく、振り抜けが凄く良い。軽いミノーからヘビーウエイトルアーのキャストも大丈夫、気になったジャーク時の不安も解消され、ルアーの飛距離も文句なし。これで桜鱒が掛かってくれればね…と独り言をいいながらロッドを振った。
テスト2日目朝5時30分、河川に向かった。日曜日だが仕事の予定が有り7時迄しか出来ない。雪代で慢性的な濁りと当日は曇天の為、レックスMDアクアマリンヤマメ(山形のショップオリカラ)をキャスト!! 開始5投目位にトゥイッチしていた手に“ガン”と明確なアタリ!!フッキング後、ゴンゴンと特有の首振りとローリングを何とかかわし、無事ランディング出来た。51cm!! 開拓河川でテストロッドを使用しての釣果に、嬉しさと肩の荷が下りた気分で、ネットの中の白銀の魚体に見惚れてしまった。
携帯電話で、開拓仲間の友人に連絡、「サクラ釣れたよ~」
友人「やったね!今、向っている途中だよ」
粕谷にも報告メールを送り、更に釣り下るも反応ナシ 「う~ん?次はバイブレーションかな!?」ヴィブラSW15gブルーチャートにチェンジ!! 釣れたポイントの少し上流から入り直し、足場が高いので、ルアーの浮き上がり過ぎに注意しながら、ロッドは下向きでスロー気味のタダ巻とヒラを打つイメージで小さくトゥイッチを入れながら鼻歌気分で友人が来るのを待ちながら釣り下った。
曲名は何だったか忘れてしまったが…(笑)
10投目、クロスにキャストしたヴィブラが流心でターンした直後に「ガツン!!」 ひったくる様な強烈なアタリに、驚きながらも追いアワセ!! 先の鱒では出なかったドラグがチリ…チリ…と鳴る「さっきのサクラより大きいかも!」プロトロッドを信じ、ドキドキ慎重なやり取りの最中に友人到着!! 「うそ!2本目!?」 時間をかけて弱らせ無事ネットイン!! 56cm!!「おめでとう~」友人とがっちり握手!! 美味しいところを頂きましたと照れ笑いした。 ヒットポイントと状況、未だ十分可能性が有る事を話し帰宅した。
昼過ぎ、意外に早く仕事が終わり携帯を開くと、メール2件、着信1件 「獲ったな…」
内容は、「2キャッチ2バラシ!!」すぐ電話し、「やったね~ 仕事終わったので、また行きます」 車を乗り換え、途中で差し入れの缶コーヒーを買い河川に向かった。
雨が降り始めていたので車の中、コーヒーで乾杯!! おめでと握手のお返し、休憩しながら、自分が帰宅してからの話を聞いた。2バラシは、かなり悔しがっていた。
雨が小降りになり、準備をしていると別の友人も加わり、3人で攻めるが風が強く釣り辛い。天候悪化の為か状況が一変!!生命感ゼロ! 立ち話の時間が多くなり、諦めモードになってきた。「最後にちょっと下流のポイントをやってみてくる」と二人に言って歩いて移動した。手前側に流心が在り、流心の向こう側に流れのヨレが出来ている。「あのヨレ、気になるんだよなぁ~」 ルアーをMDパープルバック(山形のショップオリカラ)に変え、トゥイッチを入れながら、ヨレの中でターンさせる様にロッド操作、ゆっくり釣り下った。5、6m下り、ルアーがターンした後にトゥイッチを2回 「ちょん、ちょん…ガツッ!!ゴンゴンゴンゴン!!!!」反射的にアワセ!! 朝の2本とは、全然違う…重く、強い…「きたきた…きたょ~」友人達に知らせる。鱒は流心の強い流れに乗り、走り始め一気にドラグが滑る。その下流には水位計が在り、足場が悪く自分も下れない。スプールに手を添え、鱒の引きに耐える。ロッドはかなり曲がっているが、まだバット部分に余裕が有る。引きが弱まった時に、押しの強い流れの中を逆引きで寄せにかかる。「そぅ~と、そぅ~と慎重に」何度かラインを出されたが、なんとか寄せてきた。が、ネットが無い!! 恥ずかしい話ですが、重いからと友人達の居る場所に置いて移動したのです。(反省)
友人達は「マジで!?」
「やるねぇ~!!」
「なんで掛かんの?」と、ネットを持って来てくれ、無事ネットイン!! ジャスト60cmのフレッシュラン!! 「やった!やっちゃった!!(笑)」
友人達と握手し、友と河川とロッドに感謝した。
今度のロッド、率直にイイ感じだ。鱒が掛かってからのPEライン独特の「ガンガン」とした引きを、巧く吸収してくれて粘り強いバットが鱒に主導権を与えない。ハリは有るが、ガチガチに硬い強いロッドではない。過ぎるパワーは必要無いのが解る。そして、軽く、ガイド絡み等のライントラブルが無い。
その後も、粕谷、友人、私が1匹ずつ釣り上げたが、雨と雪代の増水や仕事の都合で、川に立てる日が少なくなってしまった。
仕事のスケジュールを調整し、5月31日朝、秋田県米代川へ向け出発した。途中、粕谷に連絡を取り、昼頃合流して解禁日の朝入る場所を見て廻った。切石地区で、場所取りをしていた知り合いの面々と遭遇し、「絶対来ると思っていたよ~」「はい~来ました~」と、ご挨拶して、情報交換!雨後の増水から平水へ向うタイミングと言う事で、期待が膨らむ!!「お互い頑張りましょう」と別れ、自分達はポイント探しに戻った。
「外面のカーブ、イイ感じじゃないですか?未だ1人も居ないし、もし我々だけなら、広く釣り下りながらできますよ」流心が右岸側に寄り、広く長い瀬になっていて、鱒の着き場も多そうだ。例年ならば20人位並ぶ実績の有る人気ポイントらしい。開けている場所なので、ロッドの取廻しも十分。「ここにしよう!!」瀬頭から開きにかけての絶好のポイントに場所取りの粕谷の車を止めて、東北ザウルス軍団の待ち合わせ場所に向かった。
夜には、恒例!?の前夜祭!! 初参加なのでチョッと緊張したが、楽しい夜宴を過ごし、12時前にお開きとなった。粕谷に運転を任せ(彼には運転の為にジュースを飲んで頂いた…ごめんね)自分は眠気MAXで、うとうと…としている間にポイント到着「2時半起床ですよ」と声を掛けられ、了解とそのまま寝落ちした。
「時間ですよ~」携帯で起こされた。車から降りると、我々の車の間に1台止まっていた。急いで着替える。準備を終え、粕谷の所へ行き、「間に入られたね。」「解禁日だからしょうがないですよ。」と、話しながら、夜明けを待った。
6月になったとはいえ、朝は少し寒い。眠気覚ましには丁度イイ。今回の釣行も86PEプロトだ。今日は獲りたい!! ドキドキ、ワクワクしながら先発ルアーを選んだ。レックスMDブルーグリーンを結び、ポイントに立った。
辺りがようやっと見渡せる様になると、何処からとも無くキャスト音が聞こえてきた。隣の方から「さあ、やりましょうか」と声を掛けられ、キャスト開始!! 隣の方が3投目に「ヒット!!」ルアーを回収してファイトを見守るが、おしくもフックアウト…その時使用していたルアーがシルバー系だった。下流のアングラーもシルバー系をキャストしている。動物的勘で、お気に入りの MDアクアマリンヤマメにチェンジ、いつもよりドラグを強めに締め直して、キャスト再開!!
8投目、ダウンクロスにキャストしたルアーがターンし、アクションを入れた直後 「もそっ…」 んっ?? アワセを入れた。ロッドとラインを通して生命感は伝わってくるが、「ガンガン」と、特有の首振りが無い。「ニゴイかぁ?」下流側の方に迷惑を掛けないように、強引に流心から離し寄せに掛かった時、暴れだした。「あっ!!鱒だ!!」もう浅瀬まで寄せていたので、川原へずり揚げようとしたが、もう少しの所で上流に走り出した。
「バラすなよ!!」隣の方から声を掛けられる。
照れ笑いしながら、ロッドを持つ右手を揚げ、粕谷に知らせた。「やりましたね~余裕だと思って、行きませんでしたよ」彼なりの褒め言葉に、「冬季雄物川での借りが返せた」と、笑い握手した。取り敢えずストリンガーに繋ぎ、釣り始めた。10投位しただろうか、小さく「コン!」とアタリが有ったが、乗せきれずショートバイトに終わった。
ポイントに見切りをつけ、移動しようという話になり、写真を数枚撮影してリリース!! 元気に流れの中に戻って行った。その後、竿抜けポイントを探し鷹巣、大館地区、支流藤琴川、切石左岸側など、休憩を挟みながら釣り歩いたが、お互いショートバイトのみで、午後5時30分頃、解禁日を終了した。
きみまち坂の道の駅に皆集まり、東北ザウルス軍団では、肇さん、大下さん、鎌田さんが1本ずつキャッチ、他のメンバー全員にも桜鱒の反応は有ったが、キャッチには至らなかったようだ。しかし、近年の米代川の状況では良かったと思う。 自分は2日間しか休みが取れなかった為、次の日も釣りをするメンバーに帰る事を告げ、帰路についた。
後日、花巻の肇さんに「どうぞ、使ってみて下さい。」と86PEプロトを届けた。
何日もせずに、肇さんもこのロッドで好釣果をあげたようだ。シーズン終了後、肇さんから、ナイロンライン使用でも高評価を頂き、粕谷は北海道にて虹鱒相手にイイ思いをしたみたいだ。嬉しさ反面内心ほっと胸を撫で下ろした気分になった。
この頃、知り合いや、友人達からルアーのカラー選択、バイブーションプラグについて聞かれるのだが、河川情報の濁度が0の時も濁って見える河川をホームとしており、アピール系カラーを選択する事が多いが、気分次第だ。それと、好みのカラー選択で良いと思う。グリーンピンクなどは、超お気に入りだ。お気に入りをキャストしていると集中力が長く保持出来る。無くしたときは涙々なのだが…(笑)
バイブレーションプラグ使用についてもカラーは気分次第なのだが、釣行時間に制約が有るときや、飛距離を必要とするポイントを攻めたい時に使用している。カウントダウンで上、中、下層ただ巻(スロー、ファースト)、リフト&フォール、ヒラを打たせるイメージでトゥイッチを織り交ぜながら使用している。
2011年 多くの方々が、色々な事を感じ、考えた年だったと思う。自分に到っても、家族、友人、知人、隣人との絆や、人の温かな心、気持ち、釣りを通して自分など足元にも及ばない著名な方々との出会いも有り、励ましや、温かい言葉をかけて頂き、涙し感謝した年だったと思います。
2012年 既に桜鱒シーズン開幕している河川もあります。先日、知人の釣果も聞こえ、自分もそろそろ本格始動します。人との出会いや絆を大切に、釣りが出来る幸せを噛締めつつ、被災者の1人として秩序や配慮を怠らないよう注意しながら、納得の出来る一匹を求めてロッドを振りたいと思います。
奥田 功
アングラー 奥田 功 | ||||
PEラインにバイブレーションやディープミノーを中心にサクラマスの釣りを組み立てる新世代・新感覚のザウルスアングラー。探究心旺盛、ザウルスの新しい可能性を切り開くためにカスタムシリーズのPEモデル開発キャスターとしてプログラムに参加。地元近郊のポイントの開拓にも力を入れる情熱派。 | ||||