長年愛用していた、5.6トゥイッチンを、私の不注意で壊してしまった。
このロッドは、1998年のザウルスのカタログのなかで則さんが、鮭川でサクラマスを釣る写真がある。
めちゃくちゃカッコ良かった。右手の中には、スクリュウシートではなくリングシートのロッド。
当時、リングシートのトゥイッチンは販売しておらず、でも欲しくて、欲しくてたまらなかったロッドだった。翌年、シリーズの末っ子としてリングシート仕様の5.6トゥイッチンが発売。当然、即購入。末っ子のわりにパワーがあり、数え切れないほど50オーバーの魚を捕ったロッドである。
凄く、凄く、思い入れのあるロッドなので、何とか復活できるようにお願いした。
しかし、間違いついでに触ってみよう。見れば見るほどこのロッド、不思議でブランクにはロッドスペックもなにも書いてない。ただ、リールシートに、TS-N52MLSと書いてあるだけ。透明なビニール袋から、ロッドを取り出してみる。人間とは悲しいもので、今まで大事に、大事にしてきたロッドが横にあるとゆうのに本命そっちのけで見入っている。
まず始めに思ったのが、「ありゃ、ワンピースでトラウトロッド作っちゃった。いいんじゃないの。」
そんでもって、握る。
むむっ!軽い。
そして、振って見る。「ありゃ~、すぅんごいハリ」
「家の中で何を振り回してるの!」と言う奥さんの声も聞こえているんだか、聞こえてないんだか?
振れば振るほど「何なんだろう、このロッド? このロッド誰のだろう? 勝手に振り回していいのか?」
散々、いじって、触って、穴が開くほど見てから、修理のお礼もかねてザウルス森下さんに連絡してみる。
「有難う御座いました。無事にロッドが届きました。」
すると、「面白いでしょ。カトちゃん好きでしょ、こうゆうの。粕谷に聞いてるよ。使ってみてよ。」とだけ。
どういったコンセプトで作ったロッドか、はたまたロッドスペックは?
何も聞いてないぞ!だからだろうか、この時はまだ外見がボロンシリーズのものだった。
まずは、迷子になって家に来たわけではないようだし、思い切りお付き合いしてみることにする。
後日、とにかくこのロッドを試してみるために地元の小規模河川へ行ってみる。
いつものようにTy-rex7cmからスタート。
まずは、ショートで刻んで行く。すると、すぐに14~5cmのヤマメがヒットする。とりあえずホットする。
しかし、この川には、けっこう良いサイズのイワナが居る。今日は、その良型を狙いに来ている。
レンジを下げるためルアーはスパシンの5cm。両側のボサの、下、ブッシュの切れ目を丁寧に狙って行く。釣れてくるのは、24~5cmのイワナ。下流はヤマメ、イワナ混合だが上流に行くにつれイワナのみになる。この辺りから本番である。
落ち込みのポイント、2m先の水中に漂う草を気にしつつキャスト。
こういった狭い場所からは52という長さは実に取り回しが楽である。張り出した障害物をさけ、フォアハンドバックハンドでも容易にキャストできる。
対岸ギリギリから充分ルアーを沈め、ここぞと思った所で軽くトゥイッチ、水中で何者かが動いたと思った瞬間ロッドにズッシっとくる感触!
ゴネゴネとした感触。居たね~!これを待っていたんですよ。少し水中の草が気になるがせっかくなので少しの間、頑張ってファイをしてもらう。やや硬めに感じるこのロッドもある程度の相手になると程よくしなり、相手のパワーを充分に止められるバットパワーがある。
手前にある長く流れ出している草も気にならないほど一気に魚を浮かせ無事にランディング。
40cmに少しかける位のイワナ。本命が出たところで本日終了。足場も悪く障害物の多いこういった場所でこそパワーのあるロッドが実に良い仕事をしてくれたと思う。
粕谷に連絡して、詳しくロッドのことを聞いてみる。聞けばこのロッド、スパシン専用、4~50cmの魚が相手との事。ならばと、日を改め宮城県の荒尾川に友人と出かけてみる。この川は、60cm位までのニジマスが相手である。初めから大きい魚が居るのが解っていればこのロッドをテストするにはうってつけの場所である。
ルアーは、スパシン5&6cm、CDレックス7cm、それにトランのシンキング。まずは、スパシン6cmを結び長いトロ瀬を狙ってみる。
この場所は、人の出入りも激しく人の気配を感じると対岸のボサの下に魚が隠れてしまう場所。
静かに川に入り一服してからスタート。なるべく動かずに上流側から落とし込んでいく。数投目に下流側に落ちていくルアーにほんの少しのアクションを入れた瞬間、コチっと小さなあたり。あわせを入れ充分ファイトを楽しみ無事にランディング。見れば、友人にもヒットしている。友人のタックルは、60トィッチン、CDレックス7cm。ファイトは余裕である。しかし、こういった場所で重めのルアーをロングキャストするにはファーストテーパーのロッドより、より楽にストレスなくキャストすることが出来ると思う。
上流に行き、ガンガン瀬を狙ってみる。アップで確実にスパシンを沈め、速めのトィッチをかけ攻める。ガンガンから流速が、少し落ちたあたりでガツンとくるあたり、同時に少し緩め目のドラッグ設定のリールからラインが出る。魚の動きを見ながら、追い合わせをいれドラッグを閉め少々強引なファイトをしてみる。
グリップをがっちり手首で固定し、ロッドのしなりを一定にしつつ徐々に距離をつめる。
多少のラインの出入りはあるものの、立ち居地を変えることなく無事ランディング。
上流に行くも先行者が多く、ひとまず川から上がりしばし休憩。下流に戻り先行者の釣り下るのを待ち再開。
水深のある落ち込みのポイント。ポジションをサイドにとりまずはスパシンで泡の中を探ってみる。人的プレシャーが多かったのか、なかなか出てくれない。
今度は泡の切れ目より下流を狙ってみる。ブラウニー・トランシン・キングで底を取りながらロッドに伝わる感覚を頼りに探る。石か何かに当たった感じの所でほんの少しロッドを持ち上げその場でシェイク。
居た!やはり居た。プレシャーが高いポイントほど底の障害物の陰に隠れている。
派手なトィッチや、ジャークには反応せず流速とほぼ同じ流れで障害物の上でほんの少し浮き上がり動いたトランに反応したと思う。
速く、押しの強い流れやルアーが正面から抵抗を受けた時でもティップに暴れを感じず、的確に情報を伝えてくれるロッドだと思う。このTS-CD52MLSというロッドは水量が多いときや、大物が潜む川、障害物の多い所などにお勧めしたいロッドである。
その後、調子に乗りTy-rex7cmまで導入してまずまずのサイズを何匹か釣り終了。
ロッドそのものには問題はない。修正は今回の釣行で少々気になった点、トゥイッチをかけるときに自分の癖なのか肘に当てるのとファイト中にロッドを肘に当てやすい様にグリップをほんの少し長くして欲しいと連絡した。
最初にテストロッドが私の所に届いた時はザウルス色のグレーだったブランクもブラックの塗装になり、気になったグリップも丁度よい長さに。
カスタムの名に相応しい特殊で特別なロッドに仕上がっている。
これから夏に向けて特にスパシンが活躍する季節。
52カスタムでスパシン投げて、十分に沈めてチョンチョンってやったら、ド~ンってでましたよ!な~んて、いいんじゃないですかね。
心に残る一本をこのカスタムと共に。
山形県在住/加藤 義昭
アングラー 加藤 義昭 | ||||
サクラマスを中心に東北の流れのトラウト達をプラッキングで狙う。毎年、確実な実績を残す柔軟でマルチなスタイルの正統派アングラー。カスタムシリーズの開発よりザウルスのR&Dプログラムに参加。 | ||||