今現在テスト中の機種でTS-PE76HSというロッドがある。
前回リリースしたTS-PE86HSが大河のメインロッドと考えるとこのTS-PE76HSはシーズン中盤以降の中規模河川で瀬に入ったサクラマスをPEライン仕様のタックルで取ることに照準を合わせて開発中のロッドだ。
PEライン専用ロッドということでロッド開発のメインアングラーはTS-PE86HSに引き続き宮城県の奥田さんにお願いした。
奥田さん自身もシーズン中盤までに数本のサクラマスをこのロッドでキャッチしロッドテストとしては順調なスタートを切ることができた。
5月に入り奥田さんの仕事が忙しく中々釣行できないとのことだったのでプロトロッドを数日借りて釣行してきたがその際数匹のサクラマスをキャッチすることができたので開発途中の中間報告としてその時の様子を報告したいと思う。
5月中旬。
自分のメインフィールドである東北各河川は苗代の濁りと渇水で中休み状態だったので禁漁が迫った新潟県の三面川へ向かった。
今年も三面川流域は積雪が多く川から溢れんばかりの雪代が長引いたが釣行数日前からダムの放水量が減り全域でポツポツと釣果が出ているとのことで期待に胸を膨らませて仙台を出発した。
しかし、今回の釣行には雨雲も同行させてしまったようで現地に着いた頃には本降りの雨。
雨の降水量と共に増えるダムの放水量。
あっという間にダムの放水量は100トンを超えてしまい強制終了。不完全燃焼のまま三面川を後にすることに。
帰りの道中「何とかプロトロッドでサクラマスをキャッチしたいがどこかまともに釣りになる川はないか?」と、考えながら運転していると携帯が鳴った。岩手県宮古市の友人大下さんからだ。
なんでも閉伊川で大型のサクラマスを掛けたがバラしてしまったらしい。
「閉伊川か・・・」。
TS―PE76HSのテストには川幅が最適で好きな川の一つではあるが渇水状態が続いておりノーマークだった。
花巻の情報通平賀大地さんに閉伊川の最近の情報を聞いてみると今年は魚の遡上量が多い為かこの渇水時でも忘れたころにポツリポツリは釣れているとの情報を得ることができた。
しかし、今はまだ新潟県。
自宅の仙台からでも遠いのにここから閉伊川への移動を考えるとかなりの時間を要する。
ましてや閉伊川も渇水なので無理してまで行くほどの条件ではない。
ただ、釣れていないわけでもないし実際大下さんがついさっきヒットさせている。
三面川での不完全燃焼の気持ちもあったので「渇水だしポイントの形状把握がメインでついでに魚が出たらラッキー」的な気持ちで閉伊川へ向かうことにした。
途中仙台の自宅で仮眠をとり。目的の閉伊川へは午前7時半すぎに到着した。
眼下に見える流れは国土交通省のデータ通りの渇水。
さらに、時間と共に水位はさらに下がり続けている。
渇水の為か朝マズメを外したこの時間帯に他のアングラーは皆無。
この水量でジンクリアな閉伊川となるとまったく釣れる気がしないのだがここまで来てしまった以上やるしかない・・・。
腹帯エリアより以前から地形が気になっていた場所やこの渇水でも流れが生きている場所を探しながらランガンして行く。
気になるTS-PE76HSプロトを振った感じだが第1印象はボロンのTS76HSに調子は似ているが1ランク上のパワーがある感じ。キャストの振りぬけも問題ない。
使用ラインだがテスト釣行ということで今回はPEライン(0.8号)+フロロカーボンリーダー14ポンドという組み合わせで挑むことにした。
最近自分はPEラインを使用することが増えているがPEラインがナイロンラインよりも完璧に優れているというわけではなくやはりメリット・デメリットがあり適材適所でPEラインとナイロンラインを使い分けている感じだ。
ラインの使い分けの件になると話がかなり長くなるのでラインの件はまた次の機会にでも。
数ヶ所周るがやはり反応は皆無。
大場所を高台から覘くと流れが止まった深場に数匹のサクラマスがやる気なさそうに定位している。
状況は想像通り厳しい。
陽も真上に上がり諦めムードが漂う中ある瀬にたどり着いた。
平水時であれば釣り下るのに40分くらいかかり閉伊川の中では規模の大きい瀬だ。
平水時以上の水位では実績もそれなりにある。
この渇水で対岸まで渡れそうなただのチャラ瀬になりかけているが偏光グラス越しによく見ると底石に腐ったコケなども付いておらず水通しが良さそうな上、適度に底の変化もあるため何とかなりそうだ。
普段であればティーレックス11センチをチョイスするポイントだが今回は迷いなくブラウニー13センチ(アユカラー)をセレクトした。
ブラウニー13センチというと「一世代前のルアー」。という印象を持たれる方も多いと思う。
確かに飛距離に関しては・・・。
自分の中でも通常であればブラウニー13センチは決してメインルアーにはならない。
しかし特殊な条件下ではブラウニーでなければ攻略できないという場面が実在する。
今日のようなジンクリアの渇水でプレッシャーがかかっている条件がまさしくそれだ。
派手な泳ぎのルアーではプレッシャーで魚が逃げてしまう状況でもブラウニー特有のタイトローリングアクションやバルサの泳ぎでなら食わせられる魚が居るのも事実。
ましてやティーレックスですら弾かれるような閉伊川の流れの強い浅い瀬で安定した泳ぎをするルアーとなるとブラウニー以外考えられない。
瀬の中程まで釣り下って行くと長さにして3メートルくらいなのだが他とは明らかに水深が違うスポット(窪み)?を発見した。
水深があるといっても渇水の瀬の為たかが知れているが・・・。
そのスポット内の沈み石の前をブラウニーが通過した瞬間「バシャーン!!」と、水柱が上がった。
一瞬「鳥でも水中に飛び込んだか!?」
と、驚いたがロッドを通して伝わる魚の重みに体が反射的にアワセを入れていた。
半ば諦めムードでだらけ始めていた体に一気に緊張感が走る。何匹釣ってもヒットの瞬間はドキドキしてしまう。まさに魔性の魚。サクラマス!!
深場があればヒット後定位してくれたりもするのだが浅い瀬の中間部で掛けたため隠れる場所が無い為かサクラマスもいつも以上にパニック状態!!
瀬を左右に走るは飛ぶはで大暴れ!!
少々ファイトに手こずったが何とかネットイン!!
浅場でのファイトで底石に当たった為かブラウニーのリップが折れてしまった。
ここ数年では最高の出方をしてくれたサクラマスのサイズは51センチ。
しばし写真撮影に付き合ってもらい元の流れにリリース。
丁度、電話が数件入っていたので近くの石に腰掛け電話をしながらしばしポイントを休ませる。
しばしの休憩の後、先程ヒットしたポイントの少し上流からまた釣り下る。
ルアーはもちろんブラウニー13センチをセット。またしてもアユカラー。
先程のヒットポイントの少し下流の沈み石周りをルアーが通過した瞬間
「ギラッ!!」
サクラマスが突然現れブラウニーを抑え込んだ!!
水中で首を振る魚体は先程の魚より一回りデカイ。
ヒットの瞬間から丸見えなのでいつも以上のドキドキ&緊張感。
テストロッドの為アクションをチェックしながら慎重にファイト。
先程より流速の早い場所でのヒットだったため苦戦したが何とかランディング成功。
サイズは60センチジャスト。
この条件の閉伊川で2本とはまさに白昼の奇跡。
サクラマスのリリース後、瀬を下流まで釣り下るが事件はなし。
その後、数ポイント見て回るがTS―PE76HSのキャスティングテスト&川歩きを楽しんだだけで何事もなくタイムアップ。
テストロッドに関しては若干手直ししたい部分に気付いたが(この部分は奥田さんと指摘が一致)アクション等は問題ないように感じた。
詳しいロッドの詳細に関してはTS―PE76HSのメインテストアングラーの奥田さんのレポートに記載されるものと思われるのでここでは割愛したいと思う。
昨年は長引く雪代の影響、後半の渇水と河川ごとに好調と不調がはっきりした年だったと思う。
今年も現時点で雪の量は多く昨年の倍というところもある。昨年のように雪代に悩まされるシーズンになるかもしれない。
何だかんだ言って1月下旬東北の河川からサクラマスの第一報が聞こえてきた。
いよいよ待ちに待ったサクラマスシーズン到来!!
ザウルス R&D スタッフ 粕谷 直行
アングラー ザウルス R&D スタッフ 粕谷 直行 | ||||
トラウトのみに狙いを絞るエンスージアスト。中学生時代には小遣いを貯め、ザウルスのトラウトスピンとステラを購入。2時間以上の長距離もいとわずチャリンコで各河川に出没。豊富な情報量、情熱と行動力で日々、ビッグトラウトを追いかける。 | ||||