一年のブランクを開けて 久々に北の本流に向かう。 今回も相棒の河合との釣りになった。 一人の釣りもよいものだが、 気心の知れた仲間との釣りも この川の釣りには必要不可欠である。 今迄で一番ブランクが長い分 思いと準備は万全で 毎晩の様にアンバサダーをいじり倒し、 仕舞いには折角の美しいザウルスミノー達を 化粧だらけにしてしまう。 鮑を貼ったり鉛を貼ったり。 スッピンが一番綺麗なミノー達には悪いが 何かしら手を加えることで 一日中投げ続ける思いを込めるのである。 さていつもの事だが天気予報は晴れでも 私が北へ向かうと必ず雨雲もついてくる。 北の仲間も皆半分呆れながらも諦めている 雨は降り続いているが雨量はそう多くなく 恵みの雨になってくれるだろうか。 増水していないものの濁りが強いと 国土交通省の情報が教えくれる。 このパターンは結構得意で 頭の中は既に釣った気になっている。 河合も昨年何度かこの川を訪れているが 小型のイトウ数匹の釣果のようだ。 一礼して川に立つ。 確かに濁っているが何だかちょっと勝手が違う。 例年のことだが良いポイントも砂で埋まり スケールが小さくなってきている。 気を取り直してキャストする。 同い年のアンバサダーが滑らかにブラウニー18センチを ポイントまで運んでくれる。 1キャスト目からくるぞ、くるぞと待ち受けるが一向に気配がない。 結局何も反応がないまま次のポイントへ向かう。 勝手知ったるポイントだが入り口を間違えたのか なかなかポイントにたどり着かない。 河合とあーでもない!こーでもない!と言いながら あたりを探すとやっと一本の獣道を見つけることが出来た。 思えば10年ほど前に河合がこのポイントで とんでもないやつを掛けた時を思い出す。 何も出来ずにただ下流に下るイトウをとめようとして フックアウトしてしまって呆然としていた事が目に浮かぶ。 今もあのときのヒットポイントを丹念に探っている。 では私はどうするか。 少し下流のカケアガリと丁度濁りが薄まっているシャローを丹念に攻め下る。 ミノーは絶大な信頼を寄せているシートプスウッド14センチ。 ここもやはり砂が溜まりどんどん浅くなってきている。 核心部はもう少し下だろうか。 何も手を加えないただ巻きでキャストを繰り返す。 カケアガリからシャローに差し掛かった瞬間 ミノーが突然ドスンと止まる。 久しぶりだがジャストタイミングで合わせが決まった。 「グワングワン」と大きな振幅が手元に伝わってくる。 よしよし悪くないサイズだ。 「少し時間かけて寄せるよ」河合に声をかける。 ゆっくり丁寧にイトウの鼓動を感じるようにファイトする。 極力派手なファイトは抑えてなだめるようにリールを巻く。 中々の重量感を味わいながらゆっくりゆっくり寄せてくる。 「ドバッッ ドバッッ」 水面が賑やかな音を立てる。 丁寧に、しかし断固たる意思を持ってファイトする。 数度の首振りを上手くいなしながら思惑通りシャローに寄せる事が出来た。 「よし90あるかな」 早速メジャーを当てようとするが肝心のメジャーが見つからない。 もたもたしてると河合がメジャーを出し計測してくれた。 「楽勝で90越えてるよ、97、8、98、98!!」 久々のイトウなのに随分過小評価しすぎていたようだ。 数値を聞いて驚いたが冷静に見てみると 腹回りも凄い太さで素晴らしいコンディションである。 写真を数枚撮り大きくなったらまた会おうと願いを込めて 優しくリリースするとゆっくり深みに消えていった。 初日の午前中から良い結果が出た。 その後も丹念に探るが反応はない。 早くも結果が出て一安心だが 目標にはまだまだたどりつかない。 めぼしいポイントを叩いていけば また反応もみられると思ったが異常なほどの濁りが続く。 どうやら雨のせいではなく人為的な濁りのようだ。 数年前に90オーバーをとったポイントに入って驚いた。 一面の河川林が丸裸になり重機が河川床をならしている。 これが濁りの原因である。 何よりあの雰囲気のあったポイントが なんの面影もなくなっている。 結局ここでは一投もすることなく後にした。 実績ポイントをくまなく回るが全く反応がない。 昼飯の最中に先ほどのイトウの画像をチェックする。 相棒の撮影が上達したようで まるでメーターオーバーに見える。 撮影の上手い友が思い出をより記憶に焼き付けてくれる。 感謝、感謝。 ここで悪戯のように仲間にサイズを告げず送信する。 あっという間に電話に着信が入る。 予想通り飛騨高山の秀さんである。 この川のイトウもこれくらい反応してくれれば良いのにと 思いながらサイズと状況を説明する。 次はメーターと激励を頂き 再び川へ向かい合流ポイントに狙いを定める。 やはり魚の気配は濃厚でここでマズメまで粘ると判断する。 ソルティブラウニーを信じて ここで振り倒してみたらと河合にアドバイスする。 このポイントを託して自分は下流を探ってみるが 根掛かりが数回あっただけで反応がない。 システムラインを組み直し再び上流に戻ると やはり河合に80オーバーがかかったが 食いが浅かったかバレてしまっていた。 その後も丹念に攻め続けるが 川は滔々と流れるだけで反応は消えてしまった。 翌日も工事の影響で濁りは増していく一方である。 気分転換も兼ねて支流に入ると 小型のイトウが数匹河合にヒットした。 小さくてもイトウはイトウ。 まだイトウの営みが残っていることに 安堵しながらも再び本流へ向かう。 小さな支流が入っているポイントに入るが酷い濁りである。 しかし必ず魚はついていて 相性の良いポイントの為しつこくキャストを繰り返す そろそろ見切りをつけようかと思った時 底をドリフトしていたニューシートプス135に 明確なあたりがあった。 重量感はそれほどでもないが 流れの速さも手伝って良いファイトである。 十分ファイトを味わってランディングする。 居着きのイトウでサイズは80センチほどだが ほんのり赤に染まった魚体は 暫し見とれてしまうほど美しかった。 ブランク明けの私には出来すぎの結果である。 その後フライト時間ギリギリまで粘るが沈黙を守ったままだった。 今シーズンはこの釣行で終了のはずだったが このままでは終われないと焦る私に世界一優しい嫁が もう一度行ってきたらと背中を押してくれた。 得意のパターンの9月に行きたかったのだが 仕事の折り合いがつかず10月中旬になってしまった。 実は10月はあまり得意な月ではないのだが 飛騨高山の秀さんといつもの相棒河合と本流を回った。 結果から言うと大型のイトウのチェイスはあったものの 久しぶりのイトウ釣果無しで終了だった。 イトウの顔は見れなかったが久しぶりに釣友達が集結した。 カメラマンK氏、金野土屋コンビ、 ヴァーレ会長はじめ諏訪さん桐山さん、 会員の皆さんと楽しい晩餐を囲むことが出来た。 皆昔と比べると歳をとったが 相変わらずパワフルな方々だった。 ここに則さんがいたらもっと最高だったかな、 頑固親父がいたらまた何か起きてるかなと 感傷にふけりながらまだ暑さが残る東京に帰京した。 久しぶりの道北行脚を終えて 素晴らしい魚達にも出会えたが 手放しで喜べない状況をいくつも目にした。 至るところの木々の伐採 曲がりくねった川が真っ直ぐに 必要の無さそうな橋の建設。 知見の無い私が思い考えての事なので 間違いもあるかもしれないが もう少し自然と生き物に優しい工事が出来ないものか。 道北の豊かな自然に恩恵を受けている者として 歯痒さが募るばかりの現状である。 何も出来ていない自分とはうらはらに 各地でシンポジウム等行動に移している方々もいらっしゃる。 ただただ頭を下げるしかない思いである。 私も協力できることは行動に移したいと強く思う。 ただイトウ釣りを楽しみたいだけなのだが そうも言っていられない現実がすぐそこに迫ってきている。 また来年も再び訪れロッドを振り続けるだろう。 再びメーターオーバーに出会えるのは何時だろうか。 私の心を魅了して止まないこの川が 何時までもイトウを豊かに育んでくれる川であることを望みつつ また来年。 (2014年 12月) ザウルス・アソシエイト 岩井 淳利 |
アングラー ザウルス・アソシエイト 岩井 淳利 | ||||
デカいイトウを釣るために週末だけの北海道釣行をくり返す情熱のベイトキャスター。客観的な状況分析と何事も譲らない強いこだわりでビッグトラウトだけを狙い続ける。「納得のいく、たった1尾だけでいい」と言い切る生粋のイトウ釣り師。東京ロッド&ガンクラブ所属。 | ||||