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Jun
ESSAY: Jun


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出発前夜1時。
部屋いっぱいに散らかったタックルを何度もひっくり返して、ようやく遠征のパートナーが決まった。
ロッドは、スーパーストライカーFO60とバルカ58の2本。リールは、75年と77年のアブ2500C。

道具に対し偏愛的なこだわりを持つ私は、いつも出発前から釣った時のことを考えてしまう。このタックルで写真を撮りたいとか、どのタックルならサカナが映えるかとか、ついつい余計な妄想が頭をよぎってしまう。



ルアー選びも然り。
トーナメンターなら試合のタックルを戦略に合わせて無駄なく選別するのだろうが、困ったことに私の場合、人一倍「これで釣りたい」といった強い自我を持っていて、さらには「思い出のこのルアーを連れて行ってやりたい」など、釣果にはまったく関係ない懐古に左右されてしまう癖(へき)がある。

なるほど、この偏屈なこだわりこそがトップウォータープラッガーの性なんだ、なんて都合よく考えてみるも、実際のところ私だけの性なのかもしれない。

準備したタックルに厳選したルアーを結び、自分のアクションに狙い通りアタックしてきたバスは、一体どんなファイトをするのだろう。水面だからこそ見えるやりとりの面白さ。
イメージと現実がシンクロする瞬間。それが目の前で起こる事実。
想像するだけでワクワクする。

6つのタックルボックスにいる出番待ちのルアー達が「俺をつれていけ」と必死にアピールしている。
「全員連れて行くわけには行かないんだ」とルアー達をなだめる。
もしかするとチャンピオンズカップ決勝を控えたマンチェスターUの監督も私と同じ心境かもしれない。思い入れの強い選手や優秀な選手が多いのも困りものだ。帯同できる選手の数は限られている。



翌朝10時、遠征先に到着した。
ここは雪に覆われ、半年近くも釣り人を拒んできた北のバスポンド。実に7ヶ月ぶりの再訪である。私はこの場所が好きである。サカナがサカナらしく生きている。日本の原風景がここにはある。


今回、ザウルストレインから託されたルアーがある。開発中の新作クランクだ。
クランクといえば、ザウルスには唯一無二の存在「バルサ50オリジナル」があるが、この新作クランクの特性は如何なるものだろう。新作とはサカナは勿論、アングラーも引き付ける突飛な特徴があってこそ初めて認知される。

釣り場に到着していつもと同じ手順で難なくボートをおろす。いつもより30cmほど増水している。昨日おとといの雨の影響か。去年のこの時期より若干濁っている。水温は11度。でかいバスが動き出すにはいい頃合だが、果たしてどうか。バスはまだ深いところにいるかもしれない。まずはサーチルアーとしてマンボーを結ぶ。



通いなれたバスポンドには、誰しも秘密のポイントをもっている。
私は焦る気持ちを抑えつつ、低速でボートをそこに走らせる。水中に沈んだ無数の倒木がボートの底を叩く。
このバスポンド唯一のマンメイドストラクチャーが一番右のワンド奥にある。マンボーをマンメイド横、岸際スレスレにキャストする。

実はこの下には枝振りのよい倒木がある。ここは、マンメイドと倒木が絡み合う超一級ポイントだ。マンメイドの右側には、デカバス、左はメーターライギョ。いつも彼らが陣取っている。行き尽くしているからこそ知るポイント。キャスト精度さえ狂わなければ、確実に釣果を得ることができる。

着水後、波紋が消えるのを待ち、自分の意思をルアーに伝達する。マンボーの規則正しい左右の首振りは、究極のアピール。超デッドリトリーブによってフロントスイッシャーはゆるやかに回り、僅かにテールがきらめく。
水中では、口を半開きにしたデカバスがマンメイドというテリトリーから離れ、無防備にルアーを追跡しているに違いない。
ルアーが20メートル、15メートルと近づいてくる。ボート際まで気が抜けない。

「でるか、でるか、出るか!? 」冷静なアクションと反比例して、初投から胸が高鳴る。
そしてラインが残り40センチとなったボート際で、心臓が止まりそうなでかいバイト音。早々のバスからのアプローチ。
腹ボテバスの反転が目に入る。
瞬時に竿先を水中に突っ込んでフッキング。ボート下への激しい突っ込みが2度繰り返された後、バスは、観念したように私の手元までやってきた。

イメージ通りのバイト。7ヶ月前と変わらないバスポンド。



昼過ぎ、私は何ともいえない安堵感に包まれながら、この変わらぬ原風景の中でドライブの疲れをゆっくりと癒す。
一仕事終えた私は、コーヒーを飲みタバコを銜えながら仲間の釣りを眺めている。全ての動作に「魅せる」要素が満載のトップノッチの釣り。「絶妙の間」によって全ての動作を演じてみせる花山の釣り。みんなのアクションは十人十色。釣り人の数だけ釣りに個性がある。

さて私もこの卵形の新作クランクをラインに結ぶ。
ライギョの息吹を感じながら、枯れた倒木と新緑のオーバーハングの間にルアーをキャストする。
枯れた葦の根に潜むフィッシュイーターの突き上げを待って、何もない水面を新作クランクで引き倒す。
非潜水・豪快ウォブリングによる大きな引き波と移動距離ゼロの180度のテーブルターン、アピールと焦らしのコントラスト。ただ引きでは規則正しくキビキビ動く。あおれば過剰なイレギュラーダート。

目覚めたばかり故なかなかフッキングまで至らない不器用なライギョのバイトと、食いは浅いが釣れるとデカイこの時期のバスのバイトがセッションする。

動きが悪くなるのを承知の上で新作クランクのテールフックをマンボーのフラップテールにチェンジしてみる。リトリーブ中にフラップテールのキックバックを交えながら、バイトする為の「間」を与える作戦。怒り狂ったプリバスの連続アタックを期待してのマイナーチェンジ。
夏場には青々と生い茂るであろう水中の葦跡をイメージしながら、ひたすらキャスト、スローリトリーブ、首振りを繰り返す。
サイドから背びれを出して突っ込んでくるのか、下から突き上げるのか、それとも上から「ガボッ」と被せるような絵になるバイトか。
妄想が殺気を消して、気負った気持ちがふと緩む。



・・と次の瞬間。

「ガバァッ!!」

心の準備ができる前。ワンドのド真ん中で、オープンウォーターが突如割れた。突き上げバイトだ。
イメージと現実がシンクロした瞬間。
猛ったバイトにルアーが宙に浮く。間髪いれず、落ちてきたルアーに再度アタック。
そして、ついにフッキング。
捕食を繰り返し、充分に体力のついたその魚体がバルカ58を根元まで絞り込む。
激しいエラ荒いを2回、3回と繰り返し、バスが最後の勝負にでる。


わずか一分にも満たないバスとの勝負であるが、いつもこの瞬間、私に刺激と充実感を与えてくれる。


心の中の想像と期待への妄想は、いつか現実のものとなる。
頭の中に描くイメージが今、無限大に広がっていく。
さて、次は何を結ぼうか。楽しみが尽きない。


Jun





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