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Jun
ESSAY: Jun


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バスを始めてちょうど4年目ぐらいか。
当時中学生の私は、釣れない鎌倉湖(今は釣り禁)に愛想を尽かし、芦ノ湖を目指して箱根の旧道を登っていた。

釣り仲間二人、5、6時間の小旅行。汗だくになって自転車をボート小屋の横に止める。
生意気にもマイロッドを片手に抱え、一人前のバサー気取りでボートを借りる。



手漕ぎで行ける距離なんて限られる。時はすでに昼過ぎ。夏の日差しを遮るポイントにボートを漕いで行く。
「碇を下ろして回遊してくるサカナを狙え。」と言うボート屋のアドバイスを忠実に守り、ひたすらダーターを引き倒す。

「ガボン、ガボン」と手に伝わるこの引き味は、単純明快・ダーターならではの心地よい感覚。
投げる、引く「ガボン」。投げる、引く「ガボン」。ただこれだけを繰り返す。

単純に面白い。

たったこれだけのことだが、かなり楽しい。勿論、ダーターで釣ったことなどない子供の私にとって、サカナが飛びつくイメージなどまったく浮かばない。
「こんなので釣れるのかな」なんて考えるも他の使い方なんて知りもしない。ただひたすらダーターで、さらには水面で釣れればカッコイイということだけ考え、引き倒す。
ボートに立ち、ひたすら沖に遠投する。背伸びし過ぎのベイトロッドでルアーをブン投げる。あの頃の私はバックラッシュもベイトリール所有者だけに許される特別なステータスだと思っていた。



しばらくして、釣り仲間が突然騒ぐ。
「JUNちゃん、後ろ後ろ ルアーの後ろ」

水の色が濃い群青色から透通った色に変化した辺り。背中の黒い大きな物体が、ルアーの50センチ後ろに見えた。

「えっ、どこ?・・・うぉー、デカイ、デカイよ」
「どうすりゃ釣れるんだよ」
「とりあえずガボンガボンを繰り返そうぜ」

突如、異様な緊張感に襲われる二人。
アクションもぎこちなく丁寧になる。
仲間のルアーは10メートル先の水面に放置されている。

まずは慎重に「ガボン」

10秒待つ。

もう一度「ガボン」
バスはまったく動かない。静観している。

困った。

他の動かし方が分からない。潜らせたらかっこ悪いような気がする。

考える。
「ガボンしかないか」


私はボート近くまで接近したルアーを確認し、焦りの中で再びアクションを加えようとした。

すると・・・半人前バサーの油断をついて、静観していたバスは突如別の生き物のような敏捷な動きをみせた。

「バッシャーン!!」
「バッシャシャーン!!」

水面でダーターと水とバスとラインがぐちゃぐちゃになった。
もう何がなんだかわからない。当然、向こう合わせだ。

余裕なんてあるわけがない。
体ごと持っていかれそうになった。
どれぐらいのファイトだったか覚えていない。ロッドを左右に振り回されながら、必死でリールを巻いていた気がする。

使っていたダーターは「アンクルスミス」。池袋の釣り具屋で買ったルアー。
仲間が横で騒ぎまくる。

「ラインが捲かれる、竿を右に返せ」
「エラ洗いだ、竿を寝かせろ」

格闘の末、ボートをひっくり返しそうになりながら、二人で何とか抜き上げた。
初めてのダーターでのサカナ。そして初めての45センチ。
今では、明らかに「釣れた」一匹だろうが、当時の私達にとっては初めて「釣った」と胸を張れる一匹であった。




ボート屋のニジマス狙いの指示が功を奏したのか。いや、多分すべてが偶然だろう。
とにかく暑くて、だけどバス釣りをしていて一番思い出に残る夏休みだった。
20年以上前の話だが、この日起こった衝撃的な映像は、いまだ脳裏に焼きついて離れない。
そして間違いなくその瞬間、二人の心臓は驚きで飛び出していた。


私のダーターに対しての異常な執着はここから始まったのだと思う。

ダイブの有効活用により、ルアーを水中の有機体に見せかけることでバスの警戒心を解く。
しかしダイブ中の滑らかなダーティング間に食わせてもトップウォータープラッガーとしてのプライドが許さない。あくまで勝負は「水面」。
「ガボンというデカイ捕食音」と「ダイブ」を交えてバスを誘惑する。
これぞダーターの醍醐味。


アンクルスミスガードスミスノックン、そしてマイティーフラッターを初めとする芸達者なルアー達。
それぞれの特異な動きを最大限に生かし、バスを狂気に駆り立てる。
強引にバスを水面まで引っ張り出すことができるルアー。それがダーターなのだ。
一番気難しい奴でもあるが、そんな個性が大好きだ。

そいつらの本当の可能性をもっと知りたい。

勿論ダーターのみならずバルサ50のルアー達は、それぞれ違った表情を見せてくれる。
中には未だ説明書通りの表情しかみせてくれないルアー達もいるが、そこに自ら想像して使いまくることで、普段ではなかなか表に出さないルアーの本質を見抜いていく楽しみがある。
それは、ルアー製作者がひそかに隠しているシークレットかもしれないし、もしかすると製作者本人すらも気づいていない才能が隠れているかもしれない。それを引き出すことができるのは、個々の釣り人、一人一人に他ならない。



また反対に、釣り人として自分自身、持ち合わせていない資質や考え方、そして楽しみ方、それを教えてくれるのは、仲間であり、ルアーであり、バスそのものなのだ。

そう、ルアーも人であり仲間なのだ。


Jun





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