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Jun
ESSAY: Jun


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秋田初日。

いくら投げてもバイトがない。
八郎潟と流入河川、そしていつもの小規模リザーバー。
満水。激濁り。流れ込む水もコーヒー色。どこに移動してもフレッシュウォーターが見つからない。
水面に生命感なし。視野に入るところ、湖すべてが無反応。
「やばいな、やっちまったか」


毎年プリスポーンの開始に合わせ、GWになると秋田に出撃するのだが、今回ばかりは嫌な予感がする。
8時間の長距離ドライブが原因か、3回もボートを降ろしたせいか、はたまたノーバイトだったからか、疲れがどっと押し寄せる。
こんなときは温泉に入って早く寝てしまおう。消灯21時爆睡。




秋田二日目。

昼。未だノーバイト。
やたらと元気なのは鯉だけだ。ノッコミまくっている。
「いやー参った」
今持っているトップの技術はすべて駆使した。
自分のトップウォータープラッギングの限界を感じた瞬間。
悔しいが、釣具屋に情報収集にいく。


店長が状況を説明してくれる。
どうやら今回の事態には、いくつかの要因が絡み合っているようだ。
「つい先日まで大減水」
「やっと雪代が入って今が満水状態」
「水温13度になったのが、昨日から」
「今年の八郎潟は凍らなかった」
「現在、田んぼの濁水放水中」


そして肝心のサカナたちは、未だ2メートルラインに留まり、水面への意識がないらしい。ちなみに前日のメンターたちの竿頭は10匹。釣法はクランキングのボトムノックによるもの。
「おいおい、まだ早春、下手したら冬の釣りか!?」
この広大なフィールドでシャローを意識している僅かなバスを探していくのは、至難の業。
ならばやることは1つ。
条件のいい野池探しだ。
・田んぼより上に位置していること
・尚且つ林に囲まれた皿池
・そして雪代が入らない池

つまり、濁りが少なくて、風の影響を受けづらく、水温が上がりやすい野池を探すこと。


早速ナビを駆使して池を探すことにした。
無数の池が画面に現れる。魅力的な形をした池が点在する。本物はどれだ。

とりあえず条件に見合った野池を3つほどナビに登録する。




最初の目的地は、日本海のすぐ近くにある林に囲まれた野池。
針葉樹の防砂林を抜けて、あるべき場所に到着する。
しかし目に入ったのはヒビ割れた湖底のみ。
水がなければサカナはいない。
すぐに次の池へと向かう。

30分ほど県道を走ったあと、脇道に入り、ナビにも載らない田んぼの畦道を走る。
暫くして田んぼの突き当たりに堰堤らしきものが見えた。

「あそこか!?」
枯れた草木を掻き分け、なんとか堰堤を登りきる。
どうやら今度の野池には水があるようだ。ストラクチャーも充分にある。

「さぁ、バスはいるのか!?」

澄んだ水に若干の疑念を抱きながら、偏向グラスを掛けてバスを探す。
倒木の横、枯れ葦、立ち木・・・




「・・・・・いた!!!」

小バスが群れて泳いでいる。二日目にしてやっとバスに遭遇。

とりあえず、2、3投するが、サカナからの反応はまったくない。
キャストできるところは、堰堤からのみ。

「さぁ、どうする?」

ポイントは、水面に小枝が密集する倒木の先。
堰堤までの坂道は、傾斜が厳しくボートを出せる状況ではない。ようするに、堰堤横から山に登っていくしかないということ。

「・・・さぁ、いくか!」


最近ヌルイ釣りしかしていない自分に気合を入れ直す。
久しぶりのオカッパリ。ポケットには、ホッツィーWのホワイトボーンと新作のノックンアーチャーのレインフロッグ。そして竿先には、ビッグラッシュウォーカーのホットタイガー。
笹の葉と野バラのトゲに苦しみながら、目的のワンドを目指し、傾斜45度の山の斜面を慎重に歩く。勿論、獣道もない。


藪漕ぎ10分、やっとの思いでワンド手前に到着。
後ろポケットにぶち込んでいたペットボトルを取り出し、ひとくちふたくち、そしてゆっくり1呼吸半。
「・・・さぁ、やるか!」
藪漕ぎでラインが傷ついてないかチェック、スナップが外れていないかチェック、そして自分の足場を確認して慎重に、168センチ先の水際ギリギリに、ルアーをそっと落とす・・・・
バスを誘うため、ロッドを上下に動かす・・・

すると・・・次の瞬間だ、

「ボフッッ!!!」

いきなりのバスからのアプローチだ。残念ノラナイか。ビッグラッシュは吹っ飛ばされ、岸際の枝に引っかかっている。
しかし、活性は高い。期待できる。


2メートル先にワンド中央まで投げられるスペースを発見。
覆い被さる木々の下にダブルフックに換えたホッツィーWを水面ギリギリにキャストする。
ただ引きだ。静かな空間に「シャーシャー」と軽やかな音が響き渡る。バイトはない。


2投目。
ちょっと角度を変えて再びキャスト。
「シャーシャー」という音につられたのか、30後半のバスが真下に現れる。

「バシュッッ!!」

くー、ノラナイ。引ったくりバイトだ。トリプルフックにすべきだったか。
ちょっとここは休ませておこう。





更にワンド奥に進む。
ワンドの奥は、水中もその上の空間も、何本もの倒木や小枝が入り組んで、複雑なストラクチャーを形成している。
もちろんロッドを振りかぶるスペースもない。
コケの生えたスタンプにそっと足を掛け、とりあえず竿先をスパイラルさせ、「ノックンアーチャー」を投げる。サミングで静かな着水を心掛ける。
波紋が消えるのを待ち、ゆっくりとやさしく首を振らせる。

シャローにつき、大きな刺激は与えたくない。
そんなとき使いたいルアーが「ノックンアーチャー」だ。

水しぶきによる視覚のアピール。
音はない。ただし充分なアピール。
違和感なく、水と弾け合う。
首振りと唾吐きを繰り返し、時に静の間合いを効果的に使う。




昨日から、夏日のような日差しが振りそそぐ。
釣行開始30時間。
何投目だったか。
手前2メートルとなったとき。
タバコをふかし、スローな釣りを心掛けたようとした、そのときだ。

いきなりだ。水中の枝と倒木がクロスするブッシュの上にルアーが差し掛かったとき、突然こぶし大のホールが現れた。
時間にしてコンマ5秒。スローなバイトが「ノックンアーチャー」を丸呑みにした。




「ガフッッ!!!」 油断していた。見入っていた。
ラインが一気に右に走る。ブッシュに潜られる!!
ロッドを左に返す。
ゴリ巻きする。
倒木の下に潜られる。
エラ洗いさせ、一気にラインを巻き、倒木の上を通す。
あと1メートル。

「さぁ!!」というところで、目の前にまたもブッシュ。ラインが木に絡まる。
ラインが絡まる逆方向にロッドを回す。しかし、また次の枝に絡まる。
残念、これ以上寄せられない。自分の腕の限界か。もっとスマートに釣り上げたかった。
ただ幸運なことに、トリプルフックはしっかりとバスの口にフッキングしている。
私は少しの安堵とともに、改めて「ノックンアーチャー」を丸呑みしたビッグマウスを覗き込む。
「うーむ・・・デカイ!!」



この小さな野池の「主」はおまえなのか。水面から顔を出したまま、威風堂々まったく動かない。たいしたもんだ。偶然とはいえ、出会えたことに何か運命を感じる。


私は本来ならば訪れるはずのなかったこの野池の「主」に礼賛して、水深50センチのシャローにレッドウィングを踏み入れた。

転ばないよう、ゆっくりゆっくり積み重なった腐葉土を踏みしめ、そっとバスの口に手を掛ける。



そしてスナップを外し、ラインを巻き、しばらくは味わいたくない充実感(疲労感)にひたりながら、私は陸へと上がった。汗だくの、懸命なトップもたまにはいいもんだなと実感しながら・・・。


Jun





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