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SAURUS > エッセイ > Jun > 自然と都会のメカニズム ~ 水面で耳を澄ます
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Jun
ESSAY: Jun


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水面で耳を澄ます。
右の林から「チチッ、チチチチ」と鳥の囀りが聞こえる。
すると左の林から「チチチッチチ」。
2羽が呼応する。

「ガサササッ」水際に生い茂った隈笹が騒がしい。
動く隈笹を目で追うとテンがひょっこり顔を出した。


周囲の樹林はまだ枯葉色。

水面は相変わらず静寂を保っている。
林を駆け登るウサギもまだ白い。







そっと耳を傾ければ、躍動する春音が聞こえる。
「春の息吹を感じる」

フローターで野池の真ん中に浮かび、溜まった「都会の傷」をゆっくりゆっくり癒しながら、のんびり過ごしている。

ここはまだ、トップウォータープラッギングを楽しむ自然が残っている。
ホットタイガーのカラーを軸に、活性が上がればより自然と不調和なカラーを選び、ちょっとスレてくればフロッグカラーやマッドカラーに切り替える。
飛びつこうかどうしようか迷っている欲張りバスには、ビッグラッシュウォーカーにペラをつけてアピールする。
覆いかぶさるようにアタックしたバスはルアーを咥えて底へ底へと潜っていった。
グラスロッドから伝わる感覚が、心に鳥肌が立つような興奮を与えてくれる。







「自然を感じているのか」 


お気に入りのロッドやリール、そして投げたいルアー。
好きな道具で遊ぶ為に、傷を癒す為に、私は「この時間」を買っている。

傷つきながら得たお金で、「この時間」を買っている。


「どんな具合ですか」とふと都会の声がした。
フローターに乗った彼はさらにこう付け加える。

「ここまできてまだ一匹も釣ってないんです」







それが現実なのだ。


やる気は伝わってくる。フローターに突き刺した4本のロッド。竿先にラバージグ、クランク、後はワームか。多分釣れるよ、サカナのいるところに落とせる武器は充分揃っている。

「どこが一番深いんですか」
「流れ込みってあるんですか」


釣ってもらいたいと願いながら細かくポイントを教える自分。


まだ自然と同化していない。仕事感覚の自分がいる。







ゴールデンウィークという流れに乗って、都会から人がやってくる。

何とか時間を作って、釣れるもんだと思ってやってくる。

触れる空気と経験が感覚を研ぎ澄ます。
感覚が思考と交わり釣果を生む。


夕間詰め。

近くの渓流で5本のイワナとアメマスを釣った。
花山が釣ったアメマスは、5センチ以上あるカジカを咥えながら猛然とミノーにアタックしてきた。

カジカの溶けた尾っぽの形状が実に艶かしい。







我々は今夜の肴にとアメマスを行き付けの小料理屋に持って行き、塩焼きにして食す。

最後は釣り好きの大将が骨酒にしてくれた。

「ああ、旨い!」
その一言に尽きる。


時間はゆっくり流れるほうが心地よい。


2010年GW、東北にて。

(2010年5月)




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