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Tokyo Rod & Gun Club
田中 秀人
ESSAY: Top Notch


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チョイヤサ エエンヤーサノ ドッコイショハー ドッコイショドッコイショ
「民謡 ソーラン節より」
10月はいつものフェリー、いつもの航路。
今年も新潟港からプチキャンパーと共にゴトゴトと客船に乗り込んだ。
毎度のことだが航海が後悔とならぬよう、穏やかな海をひたすら願い小樽港を目指す。
ここまではクロックワークのように同じルーティーンが続く。
船に乗り込むと、お決まりの2等ごろ寝客室に陣をとり、荒波に耐える覚悟を固めてゆく。
今回の船出はいたって順調。穏やかな波に、明るい船内。
旅の始まりは静かに立ち上がった。

船にはいろんな人々が乗り込んでくる。
年老いた夫婦、爺さんの手には時代小説が2~3冊。
司馬遼太郎に藤沢周平。
婆さんはひたすら旅の行程や、
船の様子などを爺さんにしがみついて質問攻めにしている。
舞い上がる伴侶に、穏やかに読書を楽しみながら航海したい爺さん。
婆さんの活性とテンションだけが明らかに最高潮に達している。
マス族の産卵床とは相反して、ここではfemaleが積極的に絡みついている。

はたまた、○○大学のユニフォームジャージをまとった、女子大生の一群。
30名ほどの体育会系女子に指導者らしき大男が一人。
大男も爆発女子肉食系の迫力にすっかり影が薄い。
はちきれんばかりに育った女子たち。明らかにそのジャージのサイズじゃ小さいだろう。
ジャージの上着を脱いだ、チームTシャツ姿の下級生もパツンパツンだ。
あえてチビTなのかこれ以上のサイズがないのか、太い二の腕はTシャツを破れんばかり圧迫して、胸に輝く大学の筆記体ロゴもタテヨコにストレッチされて、ブロック体のごとく書体が膨張している。
汗ばんでシースルー気味のシャツも、ポットベリーがはちきれんばかりに露出したチビTの効果も、セクシーというより爆圧すら感じる。
その体から発せられる軍団のハシャギ声も体格に比例して、群を抜いて船内に響き渡る。
さらにボンバー女子たちはロッドケースのようなガンケースのようなものを手にしている・・・
まさか爆釣女(バクチョウジョ)?!はたまたスナイパーでは・・
声をかける勇気はなく、指導者と思われるこれまたゴツイ大男に歩み寄り、そっと聞いてみる・・・
「競技は何ですか?あのケースの中味は??」
ケースの中はRODなのかGUNなのか・・・・
心配をよそに、答えは某大学、女子ホッケー部の遠征。
なるほどと納得するが、格闘技とも称されるホッケーの選手たちの迫力と威圧感は想像以上。見事にゴツゴツで爆発的にグラマラスであった。
その光景は疑いもなく、これから会いにゆく道東の巨大アメマスの群れにオーバーラップした。

北海道に上陸するとすぐに、北のチーム「ヴァーレ」のRIKIさんからメールが入る。
「ヒデさん。爆発です・・・60~70cmアップ 一箇所で止まらぬ連発。もう腕が痛いです・・・」
な なーにーっ!!
先週は台風で大増水。まさに昨日から水がジャストに落ち始めて爆発!!
いやがおうにもテンションがマックスに上がって、東へ急ぐそのハンドルを握る手がプルプルしている。

気負って、気負って道東入りするとすぐにTEAM VALLEYと合流。
(「ヴァレー」ではなくて「ヴァーレ」と読ませるところが渋い。)
RIKIさん発見!!
とぼとぼと近づいてくる大男・・・アメマス大群のテンションにやられたのか!!!
しかし、彼の顔は思いのほか青い。
「ヒデさん、澄みません。終わっちゃいました・・・。水が昨日からガクンと落ちて、今日はポツリポツリです。」
なんと、一日で一気に減水して今日はもうすでに渇水のジンクリアー。
8月お盆過ぎに入った群れがところどころ固まってはいるが、魚はかなり薄いとのこと。


しばらくやってみるが、何事も起きず・・・・
「昨日はここも爆発していたんですよ・・・澄みません。」
申し訳なさそうなRIKIさん。でも貴方のせいじゃない、謝らないでくださいよ。

とにかくポイントを変えて群れを探す。
場所移動を繰り返し、ようやくターゲット郡を見つけたが全くやる気なし・・・。
いつもだとこうした群れは無視して、活性の高い奴らを探す。
しかし今回は選ぶほど魚影は濃くないのだ。
このやる気のない溜まりでどうにかするしかない。

さあここから、浅知恵を絞ってどうにかしよう。
先ずはCDレックス 7と8.5とスパシン 6のカラーローテーションで様子を見る。
ドチャート(ユキシロチャートはドチャートと呼んでいる)、チャートバック、ガンメタ、アクアマリン、ピンク、ライムチャート、ホットタイガー、などなど実績のド派手カラーを試す。
その手には相棒のベイトキャスター+アンバサダー。
CDレックス 7のドチャートをブチ込むと、群れがざわざわし始めた。
「怒っている、怒っているぞ!」
やる気のない塊を混ぜて、スイッチを入れる作戦。
時にわざとバイトコースを外して高速巻き、はたまたド真ん中に直接ぶち込んだり


重いルアーを叩き付ける。
目を覚ませ!じゃないけれど、刺激を与えて、怒り始めたらスローでバイトコースを通してやる。
ルアーがぎりぎり動くデッドスローに引くと、口を使って喰ってくる。
こうした群れにおいて高速巻きでバイトコースを通すと、ほとんどがスレがかりになってしまう。
しっかりバイトさせるためには、ここぞというタイミングを見計らってスローで狙うのだ。
スローで喰ってくると、ほとんどがルアーをガッチリ丸呑みしている。
すべてのルアーとサイズ、スピードの変化を見切ると、またはじめからローテーションで塊を怒らせるところから始める。
そして、怒って体色が濃くなってくると、スローでバイトコースを通す。
これを地道に繰り返してゆく。ルアーのウエイトを変え、種類を変え、サイズを変え、カラーを変え・・・・
スピードとコース変化のチェンジ オブ ペースで、喰わすタイミングを一点に見つめ(強制的にローテーションと刺激で)バイトモードに持ってゆく。


バッチリとパターンを掴んで、75cmを筆頭に70オーバーが7本!
総数 60本以上、2日半でゲット。
70cm UPはなぜかほとんど凶暴なメスで、オスは1本のみ。
まるで行きのフェリーで出会ったあの群れが今回の旅を暗示していたかのようだ。
渇水のジンクリアーという決して状況が良くない中、無理やり口を使わせてねじ込んだ渾身の釣果。結果だけ見たら出来過ぎだろう。この状況下では会心の釣果で大満足だ。

でも、なぜか少し釈然としない部分がある。
手放しで今回の釣果を喜べない何かが忍び寄っているのだ。


数年前・・・増水のストレートなガンガンの早瀬で、アップストリームの超高速巻きでゴンゴン喰ってきたあの怒涛のストライク連発。
増水して何日も水が落ちなかった保水力と、濁流の中でも貪欲にミノーを襲い続けたあの桃源郷のアメマス。これがほんの数年前の事なのだ。

今回も台風一過のあと、桃源郷が何日も続くはずだと信じていた。
最上の水郷はわずか2日ほどで減水してしまい、この大増水後にもかかわらず、
川の中の魚影は薄いまま・・・・。
(今回の僕は後の祭り(プチ祭り?)でこの川にたどり着いたという訳だ。)


この川の上流で高速道路の建設が進み、大量の土砂がこの数年流れ込み続けている。
水深3mはあっただろう大渕も今は1.5m程に浅くなり、
水深1m以上のポイントもポツリポツリとしか無くなってしまった。
明らかに川が浅くなり、増水後の減水は一気に川を干上がらせ、あの森の保水力が暴力的に奪われてしまったのだ。
川の環境が急速に悪い方に向かっているのは間違いない。だからこの増水で、あの巨大なアメマスの大群遡上が見られなかったのか。
はたまた名を馳せ、銀座になってしまったこの川の人的プレッシャーの影響もあるのか。
最近注目を浴びている道東地区の海アメ人気の影響もあるのだろうか。

いろんなスタイルと楽しみ方があるので、何が良いとか悪いとかは一概に言えない。
ただひたすら命が繋がって、この奇跡に出会える可能性が続いて欲しいと祈るだけだ。
それらを包括するポテンシャルが、追い詰められたこの自然の治癒力に残っていればとひたすら願うのである。

桃源郷は消え去ってしまうのか・・・・。

アメマスは鮭ほど母川回帰の本能が強くない。
状況が整えば産まれた川にある程度のパーセンテージで戻るのだろうが、アメマスのその確率はサクラマスよりもさらに低い。
川が荒れて浅くなり、保水力と栄養が落ち込み、産卵床が適さない場合にはその川に遡上することをやめてしまうのだろう。
居心地のよい流れを探し求めて、別のところに行ってしまうのか。

この川のアメマスたちは何処へ・・・
道東の大河「釧路川」に集結してその多くが遡上するのだろうか。
別の川に遡上して、あのグラマラスな群れの行き場と産卵の環境が整うならば、
まだ救いがある。
安息の地を求めて、あの桃源郷のアメマスたちが遷ってゆく道は残されているのだろうか。


いくつか気がついたことがある。
ここ数年、遡上数と群れが減少する一方、この川のアベレージサイズは上がっている。
70cmアップが釣れる確率が高くなっている気がする。
さらに以前は70アップにおけるオスとメスの比率はほとんど変わらなかった気がするのだが、今回は最近の仲間の釣果も含めてもなぜか大型はメスの確率が高くなっている。
この事実は昨年も感じたことだが、これらは単なる偶然の出来事なのだろうか?
ただ単に時期が深まればメスを争うオスが攻撃的になって、オスのヒット率が上がるというだけの事なのだろうか。
それともこれから起こる何かを暗示しているのだろうか・・・。
はっきりとした理由はわからないが、なぜか胸騒ぎがする。
アングラーのリリースだけではどうにもならない現実を無情にも感じてしまう。

この桃源郷の未来は、これからの数年ではっきりと方向が見えてくるような気がする。
心配していたことが取り越し苦労であることを願い、また来年も出かけてみようと思う。

素晴らしいネイティブ ビッグトラウト。それも70cmを超える巨体を、ここまでの高確率で狙える河川を僕は知らない。


爆釣しても、雑にならないよう一匹一匹を大切に釣ろうと言い聞かせてこの川に立ってきた。麻痺して雑にだけはなりたくない。
北の奇跡、あの巨大アメマスの桃源郷が来年も・・・
いや、未来永劫に命を繋いでくれることを強く願いながら僕は冬ごもりに入る。

訪れた長い冬眠の季節。
薄暗い工房の籠の中に僕の憧れが固く閉じこもって行く。
そして僕は、ただひたすら押し寄せる何かに怯え身を潜め、ひたひたと忍び寄る刺客の足音を感じている。 




ヤーレンソーランソーラン ヤレン ソーランソーラン ハイハイ
「民謡 ソーラン節より」
…だろうか


ヒデ
2012年12月


田中 秀人





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