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SAURUS > エッセイ > トップノッチ > 僕がバルサ50を選んだ理由
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トップノッチ
ESSAY: Top Notch


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「見ざる、言わざる、聞かざる」で有名な日光の東照宮。
実はこの建物、あえて柱を一本逆さまにして、完成しない状態にしてある。その理由は、「完全なものは壊れる」という考えから柱を一本天地逆さまにして「永遠」を願い、「完全」に完成させなかったのだ。絵の巨匠「レオナルド・ダ・ビンチ」の作品も、「完全」に完成していないものが多いが、そこには何か同じような理由があるのかもしれない。


水もまた、「完全」に透き通っていては魚が暮らすことはできない。程よく濁った水のほうが多くの生物が共存できるのだ。
そして、人も「完全」ではない。「完全」ではないからこそ「個々の色」に違いがある。
黄色と青が混ざることにより緑が生まれるように、人も「個々の色」を共有することにより、一人では生み出せない「色」が生まれるのだと、僕は思う。


音楽は音を共有して何かを表現する世界だ。そこは、「弾く人、聴く人、作る人」で成り立っている。まず、「作る人」が楽器を作り、「弾く人」が音で自分の表現をして、「聴く人」がそれを感じ、評価する。

釣りはこの音楽と良く似ていると思う。
まず、「作る人」(ビルダー)がリールやルアーを作り、「弾く人」(アングラー)がルアーアクションで表現をして、「聴く人」(魚)が食うか食わないか、評価する。



だから釣人は、今日はどんなアクションがいいとか、どんな色がいいとか、「聴く人」である魚に合わせたやり方をするのは、まるで売れるために作った音楽みたいであまり理想的ではない。それに、魚に合わせて釣ることを優先するのであればトップにこだわる意味があまりないと思う。

演奏は評価されるかどうかは別として、自分の表現をしなければ意味がないし、自分の表現ができなかった時に良い評価をうけても「弾く人」は納得できないだろう。
釣人は「弾く人」だから、理想的なのは魚に合わせるのではなく、この色で、こんなアクションで、こんなシチュエーションで、といったふうに自分の表現をして、それを魚に評価されることがオンリーサーフェイスの醍醐味ではないかと僕は思う。


「作る人」もまた、「弾く人」に合わせるだけではなく、自分の表現がもとめられるものだ。今ルアーを作るとなると、どうしても先人が作ったアイディアの上に自分の色を加える形になり、「完全」なオリジナルと言うわけには行かないだろうが、それは音楽で言うと、バッハが音を12の音階に分け、その12音階の上に、モーツアルトやベートーベンなどが曲を書いているのと同じことだと思う。
(ちなみに音は12で「完全」に割り切ることができないので、機械でそれを調整することはできない。だから、その割り切れないところを人間の感覚で、どうずらして調整するかが調律氏の腕の見せ所だ。)

だから先人の上にのることは構わないのだが、大事なことは物つくりの「テーマ」だと思う。例えば、メガバスなどのメーカーは「完全に本物に近いルアー」という徹底した「テーマ」があり、とてもいいと思う。





では、バルサ50にはどういう「テーマ」があるのか?
あれだけ加工に手間がかかるのに、何故バルサ材なのか?


ヘドンのザラスプークがある時期、プラスチックの加工が上手くできずにボディーが曲がってしまっていた。
当時はなんとかしなくては、と生産技術の向上に努め、ようやくまっすぐなボディーを作れるようになったのだが、今や人気があるのはこの曲がってしまっていた、ご存知の「ソリザラ」だ。今はわざわざ熱でプラスチックを曲げて「ソリザラ」を作っているらしい。さて、これがモノとして本当にいいモノといえるのだろうか?
話がそれたが、いずれにしても僕はザラもソリザラもあまり好きではない。

理由は、よく動くからだ。
・・・いや、違う。

「ルアーに求める、いい動きに対する概念と「テーマ」が違うからだ。」

ザラは誰でも簡単に首をふらすことができる。「完全」ゆえにそこに使い手による「色」の差があまり出ない。
一方ビッグラッシュのスケーターは少し動かすことが難しいが、使い手による「色」の差がはっきりと出る。もちろん選んだタックルやラインによっても違いが出るし、使い手による表現の幅が広くなる。
バルサ材は使いづらく普通のウッドの方が動きが良い、と思っている人も多いようだが、ウッドの場合ルアーそのものが持っている動きの閉める割合が多いので、逆に言うとそれは使い手による表現の幅が狭い、ということにもなる。

軽いものを重くすることはできても重いものを軽くすることはできないので、バルサ材はビルダーにとっても浮力のコントロールなど、表現に幅がある材料なのだ。
さらに言えば、ただ巻いているだけでも良く動くルアーがあるが、それでは「完全」にルアーが釣ってくれたようなもので、そこに使い手による「色」の差はあまりないということになる。楽に釣りたい時はそれもいいのだが、さて、どっちを選ぶのか?






これは「楽器選び」にも共通している。
持っている「色」の数は少ないが、だれでも簡単に音を出せる楽器がいいのか・・・
「完全」に弾きこなすのは難しいが、表現したい多くの「色」を持っている楽器がいいのか・・・


答えは簡単だった。

使い手による表現の幅を広げてくれるルアーを・・・

僕は選んだ。



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