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トップノッチ
ESSAY: Top Notch


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君はいったい何を求めているのだろう?
君はいったい何処へ行くのだろう?

飛び出た寄り目がこっちを見ながら、今日も不器用に、

カポンッ!
カポンッ!!

何か問いかけるように、

カポンッ!
カポンッ!!


なぜこんなにもこのルアーで「釣りたい」と思うのだろうか・・・・・
バスを釣りたい。ではなく、このルアーでバスを釣りたい。

そんな思いを抱き続けなければ、あのアメイジングな経験をすることはできなかったと思う。そして、そんな経験ができたからこそ「もっと未知なる何かはないのか」と想像力を膨らませ、新しく発見する喜びを味わうことができたのだと思う。
いかに自分らしく、いかに心地よく、いい音で、いい感触で、きれいに美しく釣るか・・・
そんなふうに、マイスタイルを作ってこられたのもこいつのおかげだ。




魚の数は減り、スレて釣れなくなってきた今日この頃も、釣りたくてしょうがないルアーばかりが出回る今日この頃も、僕らのスタイルが変わることはない。

カヌーのように優雅で威厳をもって走るジャガーに、UMCOの両開きのタックルボックスを積み、ロッドはフィリプソン、リールはアンバサダー。
ムード漂うモダンジャズを流しながら、いざ釣り場へと出発する。


僕らの釣りは「アートフィッシング」だ。








モダンジャズのテナーサックス奏者「ズートシムス」は、めまぐるしく弾きやすい新製品のサックスが発売されるなか、「セルマーのラジオインプルーブド、1934年」1本を生涯弾き続けた。
確かに「ラジオインプルーブド」は弾き難い。
しかし弾き難いとは、それよりも引き易いものを手にして初めて感じるものであり、その後の引き易さを追求した楽器はその代償としてよい音を失っているのだ。「ズート」の演奏を聞いて弾きにくい楽器を使っていると思う人がいるだろうか。利便性の追求は時として本質を失う。「ズート」にとって、「ラジオインプルーブド」はワンアンドオンリーの表現ができる唯一無二の楽器だったのだろう。
そんな「ズート」の音は太くて柔らかく、驚くほど豊かなサウンドで、かすれた低音の渋みはもはや麻薬。毎日のように依存して聞きたくなるほどの音だ。そしてあの安定感。ジャズのアルバムにはアタリハズレが多いのだが、彼のアルバムにはまったくといっていいほどハズレがないのだ。


ロシアのバイオリニスト「ダヴィッド・オイストラフ」は戦時中、多くの音楽家が疎開するなか、モスクワに残り、精力的にモスクワや戦地にて音楽会を開いた。そして、1年半もナチスに支配され、飢えと寒さに苦しむ人々を励ますためにレニングラードへ向かう際には、敵のレーダーをかわすため低空飛行でオネガ湖を越え、数日がかりで現地入りした。
分厚いコートを羽織った人々で埋め尽くされた演奏会場。
敵に包囲された絶望的な状況でも、人々は「オイストラフ」の音楽に耳を傾ける。
演奏の途中、空襲警報が鳴った。
誰一人、動じない。
「オイストラフ」も最後まで演奏した。
まさにこの日のチャイコフスキーの調べは勝利の宴だった。




戦後、皇帝と呼ばれたバイオリニストのメニューインから「君なら必ず豊かな暮らしが出来る」と、西へ亡命することを進められるが、彼はこう言った。
「今日の自分の地位があるのは、ロシア政府のおかげだ。連邦政府が音楽教育を受けさせてくれた。生涯忠誠を誓う。」

そして、その後も「オイストラフ」はヨーロッパやアメリカ、日本など世界各地でリサイタルを行い、家も車も手に入れられるほどの外貨を稼ぐが、すべて祖国に没収され国内レートの最低賃金が支払われた。そのため、パリのリサイタルでは物価の違いもあり、本番前夜に食事をする金もろくに持っていなかった。結局「オイストラフ」は政治の道具に使われながら、一生涯、祖国のために苦悩の人生を生き抜くのであった。

そんな「オイストラフ」の音は、信じがたいほど正確かつ明瞭であり、豊かさ、リリシズム、しなやかな左手が醸し出す輝かしいいビブラートと無限の陰影をもつ色彩があった。


どんな時代になろうとも変わらない「永遠のスタイル」が自分の中にどれくらいあるだろうか?




君はいったい何を求めているのだろう?
君はいったい何処へ行くのだろう?


カポンッ!

カポンッ!!



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