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SAURUS > エッセイ > Jun > 2011 至上のとき
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Jun
ESSAY: Jun


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木々と水面の間、ルアーを滑り込ませるようにキャストする。
ピンスポットにルアーを投げることができるのは、長年やり続けた成果。

今日も何百回キャストしたか分からない。
これだけ投げても反応がない。心が折れかけたとき、ついに水面が動く。
「バフッ!」
柔らかいバイト音と反比例して、ロッドが綺麗に弧を描く。
「ズンッ!」
5時間の沈黙を破って現れたバスは、「ノックンスピン」を銜え、水中へ力強く潜り込む。
私はロッドをたて、今年初となるバスの引き味を堪能する。
フローターの周りを一周、二周・・・。
私はバスと共に乱舞する。

三月初旬。低水温。まだまだ活性が高いとはいえない状況下。

有機的な水絡みと「シャララ」という無機質な音が融合して、バスを冬から呼び起こす。



初バスから早二ヶ月。
終盤にさしかかった狡猾プリスポーンバスを求め、再び水面に浮かぶ。
薄暗い早朝5時。

前日の緊張が途切れる僅かな時間。
必要な捕食と必要な縄張り意識が交錯する貴重なタイミングに「ノックンスピンBIG」を結ぶ。

風の流れに乗って、ポイントへ静かにアプローチする。

そこは岬の先端。
デカバスの一等地。
崩れた立木が最高のストラクチャーとなり、舞台を整える。

プレッシャーをかけないよう、いつもより長めのディスタンスをとる。
バッシングシャフトを思いきりしならせ、岬の向こう側に大遠投する。

弱ったサカナを装う、不可思議な引き波ダート。
パララララと響き渡るペラ音は、「生」への主張。

捕食か苛立ちか、2つの感情を誘発する魅惑のアクション。
「さあバスよ、我慢できるか!!」
トップウォータープラッガーの交感神経とバスの副交感神経が入り乱るその矛盾。

波で削られた岬岩の亀裂を、なめるように攻める。
静寂が不気味に次の瞬間を誘導する。
薄暗がりの中で響き渡るルアーの、バスへの威嚇音。

いつでも襲いかかりそうな緊張の一瞬。


でるか、でるか、でるか、・・・「否」・・「でるはずだ !!」・・偶然を超えた、限りない必然を願うとき・・・



「ドヴァ!!、ババババッ!!」

黒い塊がいきなり水しぶきをあげる。

前触れもなく下から突き上げる狡猾バス。

細身のシェイプがバスの口にヒットしている。

ロッドが絞り込まれる。

次の瞬間おこる見事な跳躍。

0.3秒の長いテールウォーク。

この瞬間、まさに「至上のとき」
バスの躍動 が、私の感情を解き放つ。


(2011年5月)


Jun





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