昔話から始まっちゃったけど、今の宮川はどうなのよって?
残念だけどこの5年で2回も続いた大水害と、とどめの3年前の台風により見るも無残な姿になってしまった。宮川には現在も川中や河川敷に重機が居座り護岸で固め川底を平らにならしている。
見る度に心が痛む。
このままではまずいと本当に感じて、行動を起こしている。
少し堅い話になっちゃうけど、河川改修問題にお付き合いいただきたい。
宮・庄川流域ネットワークなるNPO団体が有り、行政と一般の有識者などが集まり、情報交換をして河川改修などを考えるという、すばらしい大義名分を掲げている。
実際はどうなのだろうか。
自ら進んでその団体に僕は5年前から参加し、釣り人の立場から意見を発信している。
僕はこう思う。そして行動している。
- 河川改修をするなとは言わない。自然にやさしい、共生できる方法があり実際に成功している事例も実在している。多自然型工法の提案を行う。
- 新潟の粗朶沈礁工(そだちんしょうこう)と言う自然の材料を使った多自然型河川改修の方法など新潟の専門技術者と連絡をとり新潟まで自費で出向いて粗朶工法を学び環境にやさしい河川改修を行政に提案した。
粗朶工法とは森林の材木を育てる過程で選定する枝(粗朶と呼ぶ)を組み合わせ沈礁を造り、川底に埋めていく工法で、古くは江戸時代から河川改修に使われ新潟の信濃川などでは現在でもその護岸が生きているほど丈夫である。粗朶がかごのように組み合わさり水生昆虫やプランクトンや藻が発生しやすく、小魚の住処にもなり生態系を保持できるのだ。
当然、フィッシュイーターの鱒族にはこの上もないプラスになるのだ。
強度もコンクリート護岸の1.5倍といわれ、平成16年信濃川水系の水害で堤防が決壊したときも崩れた部分はコンクリートで、粗朶沈礁で行った部分の護岸は無傷であった。
環境に優しく護岸として強度もあるこの工法をぜひ全国に採用してほしい。
このように提案を行った。
この提案から実際4年前に宮川の護岸に一部、粗朶工法が採用された。
しかし3年前の台風の災害でその部分も含め町全体が破壊されてしまった。
本当に悲しい出来事で、努力が無駄になってしまった。
もう一度提案をやり直しているが、最悪なのは行政の担当が3年たって全く新しい人間に総入れ替えになりゼロからまた提案を積み上げなければならなくなった事だ。そして、現在は災害復旧と安全確保のため提案は100パーセント無視されて護岸が進んでいる。
- たとえ人工であっても自然と共生できる人工的な河川改修工事を進めるべき。
例えば、田園風景の中で、子供たちが小川でフナやタニシをとって遊んでいる。
水の張られた田んぼの中ではトキがドジョウをついばんでいる。
これはとっても人工的な風景だけど、自然とのバランスは崩していない。
人は自然を無視して生きていくことは出来ない。
僕が声を大にして宮・庄川流域ネットワークの会議で発言しているのは、配慮があれば自然と共に生きる人工的な風景が河川改修でも可能であるということなのである。
- ビオトープの考え方を強く提唱したい。
ビオトープ(川、川原や、森、林、山、魚だけでなく獣も虫も鳥も全てが繋がって自然環境を形成する)の考え方を提唱し、川だけでなく魚だけでなく、山も全ての動植物が繋がってビオトープが形成されて初めて豊かな川が実現する。
- ドイツなどの環境先進国の事例を学び提唱する。
無力とあきらめず、このようなアクションをこれからも進めていくつもりでいる。
災害の後も、現在の河川改修が進む中も宮川を源流から神通川まで全て歩いてみて回った。辛いことだが、釣りができる好ポイントの80パーセントは災害で破壊され残りの10パーセントも工事により破壊された。新しく災害後に出来た好ポイントも重機が入って埋めてしまい、河床を平らにして意味無く環境を破壊している現場も遭遇した。
僕に何が出来るのか自信はないが、リバーキーパーとして子供の頃から僕を包んでくれている宮川の環境に少しでも役に立ちたい。
宮川と飛騨の自然に恩返しがしたい。
こんな最悪の状況でも、トラウトたちの適応能力とたくましさには感動してしまう。
宮川の最高のポイントは10パーセントまで減り、魚の数も10パーセントまで減少した。そうした中、あのマスたちはどうしているのか心配になって宮川にまた足を運んでいる。しっかりと状況を読んで、アプローチしていくと最高のワイルドトラウトたちが答えてくれた。
主役は人間ではない。自然とその中でたくましく生き抜くマスたちだ。
次回からはそうした中でのさまざまな状況の宮川トラウトたちの近況を報告したい。
次回からの宮川のプラッギング レポートにご期待下さい。
田中 秀人