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SAURUS > エッセイ > 山田周治 > 処分場から流れ出る水が、川やダムの水を危なくしている
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Tokyo Rod & Gun Club
山田 周治
ESSAY: Shuji Yamada


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「安定型廃棄物最終処分場」という言葉をご存じだろうか?・・・
という質問の仕方は、ごめん。失礼だった。いまや日本中の至る所で処分場問題が発生していて、新聞を普通に読んでいる人なら、少なくとも週に1回ぐらいは、この言葉を見かけているはずだからね。



安定型処分場には、安定5品目と呼ばれている

 (1)廃プラスティック
 (2)ゴムくず
 (3)金属くず
 (4)ガラスくず、コンクリートくず、陶磁器
 (5)がれき類(工作物の新築、改築または除去に伴って生じたコンクリートの破片など)

の、5種類のゴミが埋められる。

なぜこの5種類のゴミが「安定」と呼ばれているのか?といえば、土の中に埋めても腐食したり、有害物質を出すことはない。変質しないから安全だ、ということなのだ。


《えっ、ほんとうかい?プラスティックやゴムって、放っておくといつの間にかボロボロになって、崩れたりべとついてきたりするじゃないか。》

・・・と、あなただって疑問に思うだろ?

ところが法律では、「そういうことはないのだ」、ということになっている。変質しないものを埋めるのだから、というわけで、安定型処分場は、素堀の穴にそのまま廃棄物を埋めて、土を被せればいいことになっている。

実際はどうか。

土の中では、僕らが経験しているように、土の中で空気や水に含まれている酸素に触れて、腐食する。腐食したプラスティックやゴムから発生した物質が、ガスになって発散される。発散した物質どうしが結合する。

雨が降る。水がしみこむ。地中に発散した物質や、結合した物質の中で、水に溶けやすいものが水に溶ける。物質を溶かし込んだ水はゴミの中を通って、処分場の底に到達する。
処分場があるところは、山奥の谷間だ。両側の山を削ってお椀のような形に広げて、埋立量を増やしてあるけれど、谷間であることに変わりはない。

底に達した水は、元の山の地層に浸透していく。浸透する量を超えた水は、昔の谷に沿って、ゴミの底を流れ、処分場の最下部から流れ出て、源流になる。
処分場の水が流れ出ている谷間に行ってみると、渓流は昔の姿そのままだ。
けれど、流れている水が違う。無色透明、澄み切った以前の水とは違って、いまここに流れている水は、透明ではあるけれど薄茶色に染まっている。

昔は川底の石をひっくり返せば必ずいた川虫が、いまは1匹もいない。川虫どころか、ヤゴもいない、シマドジョウもいない、ヨシノボリも、サワガニもいない。生物の姿が、いっさい見あたらないのだ。




こんな水が流れくだって、他の谷と合流して、大きな流れになる。ダム湖に流れ込む。
いまはまだ、水質調査で調べてみても、処分場からの汚染物質が原因だと特定できるほどには、データは出てこない。

けど、ダムの水は、たしかにおかしくなっている。岸辺で掬ってみても、甲殻類も小魚も極端に少なくなった。
生物多様性を声高に主張する人々はそれを、生物の減少をすべてバスやブルーギルが食べてしまうせいだ、と決めつける。
けれど、外来魚論争を繰り広げている間にも、水はどんどんおかしくなっている。そのことにもっと、目を向けなければならないのではないか。


山田 周治






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