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SAURUS > エッセイ > 相原元司 > 最終日。少し風もおさまってきて、朝一、ビルが「今日は出るぞ」と言ってくれた
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ファイティング・ロッダーズ
相原 元司
ESSAY: Shuji aihara


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ブルーマーリン、ブラックマーリン、ストライプマーリンが同時に釣れる場所。 それもフライや、ライトタックルで狙える所があると言うので、一年前から予約を入れた。
なかなか予約が取れないキャプテンと聞いていたがすんなり予約が入った。「何だ、けっこう楽に予約が入るじゃないかよ」と思いつつ時が流れて出発まで数カ月になった時、エイジェントから連絡が入り予約していた所が取れてなく他はすでにフルブッキングだと言う。「どうしますか?」と、エイジェントに言われてもバイキングIIに乗れなくては仕方がないのでこの年は泣く泣くお流れにした。


その時点で次の年の予約を入れた。来年は必ず頼むぞと念をおした。 ビッグゲームの世界では、日本人は相当にナメられているものだ。この予約の段階でのトラブルで実際に釣りに行けたのは2年越しであった。


2003年3月オーストラリア、ポート・スティーブンス釣行となった。メンバーは、ヒロこと、大阪の上村磨佐裕さんと、ヤマこと、山内一美さんと私のファイティングロッダーズ3名の釣行となった。上村、山内さんは6日間の釣行で先に現地入りし後から私が4日間の釣りで合流するという形となった。 昼頃現地入りした私はマリーナを散歩することにした。
この時期はマーリンのベストシーズンと言う事でトヨタ自動車が主催しているマーリンのビッグゲームトーナメントが行われている。周りのクルーザーにはトヨタカップのフラッグがたなびいていた。 風がかなり強くトヨタカップは中止になっているらしく、沖では大シケになっているようであるが上村さんと山内さんはバイキングIIに乗り沖に出ているようだ。
夕方までマリーナでブラブラしていると45ftの堂々たるクルーザーが帰港してきた。
上村さんに聞くと海は大シケで2日間全くダメだと言う。船長のビル・ビルソンの腕はどうかと聞くと、分からないと言う。
それはそうである。
魚を掛けてファイトに持ち込まないと操船技術は分からない。


次の日、初日はカリプソと言うバイキングIIより少々、小型のクルーザーに乗り込んだ。
マリーナに入る時から風が吹いていて、ジャケットを着込んでいないと肌寒い陽気である。沖に出るにしたがって風は強くなり、波も高くなってきた。 このポート・スティーブンスと言う港は比較的浅く、その浅い瀬に風が吹くと波が出来、ヒットして大きなウネリが出るところらしい。  釣り場につきティーザーを流し出して少しするとなんだかムカムカしてきた。はじめての船酔いである。
あまり辛いので横になっていたのだが、横になりながらティーザーを眺めているとムカムカしてきて思わず海にコマセを吐いてしまった。一日中そのウネリの中をティーズして5回もコマセを吐いてしまった。デッキハンドの一人も吐いていた。
この日はなにも出ずに船酔いの一日に終ってしまった。


つぎの日からは世界一のマーリンのキャプテン、ビル・ビルソンが操るバイキングIIに乗り込み、彼のスーパーテクニックが見られると思うと楽しみである。
2日目も風が吹いている。沖に出ると、海は前日と同じようである。 前日の船よりバイキングIIの方が大きいせいか、昨日のように揺れはひどくないが、余り気持ちのよいものではない。釣りをする前に、プラクティスと言って、20フィートあそこに投げろ、次は30フィートあっちへ投げろと言う。 言われたところにキャストできるか完全に試されている。 次にアクションを付けてみろと言うのでトビペン・マーリンモデルをキャストしてアクションを付けてみせたらビルはあまりよい顔をしないで首をかしげた。 まあいいからそれでやれと言う感じである。
日本人は本当になめられているものだ。
後で聞いた話だが魚がティーザーに出て来ると魚の目の前ではなくGTを釣るようにフルキャストしてしまうアングラーとか、仲間何人かで乗船しているとマーリンが出ると全員でキャストしてしまうとか、決定的なのはドラグを緩めろと言ったらスピニングリールのドラグノブを取ってファイティングチェアーの上に置いたアングラーもいるそうだ。
これ、すべて作り話で無く本当の話のようでこのようなアングラーを見ていれば試されて当然だと思う。
さて、よい海域をティーズしてもマーリンは一向に出てこない。 次の日も同様、しけている海で一日中ティーズしているだけであった。


最終日は少し風も治まってきて、朝一、ビルが「今日は出るぞ」と言ってくれた。
その前2日間は出るかでないか分からないがやってみようと言う事だったので最終日にリップサービスで言っているのかとも思ったのだが、彼を信じるしかない。
沖に出ると前日より風は弱まっていてウネリも小さくなっている。 今日はストライプマーリンを釣らせると言う。 ほんとに予告通り行くのか聞けば、ブラックマーリンは岸近く、次にストライプマーリン、一番沖のブルーマーリンの海域だそうで本日はストライプマーリンの海域をティーズするらしい。
今日は出ると言う言葉を聞き集中してティーザーを流す。 一時間流し、2時間流し3時間、4時間流すが全くティーザーにはなにも出てこない。
今年の釣行はダメなのかと思いつつティーザーを眺めていた時、ポート・スティーブンス初のマーリンがティーザーに出た。
ザウルスのインターナショナルクラス・ターポンスティックにボス・リール870、ラインはブルート20LBにトビペン・マーリンモデルのオレンジカラーをキャスト、目の前1m所に落としてアクションを与える。
一発で食らい付いてフッキング、フッキング。 「ドカーン!」とジャンプしたその口元からはオレンジのトビペンがぶら下がっている。
物凄い勢いでマーリンが逃げる。それに負けずにビルの物凄い操船テクニックで迫る。
常に50m位の所にマーリンがいる。
波をかぶりながらのファイト、約50分でデッキハンドのジンボーがタグを打った。
これで終ったと思ったらビルがまだやれと言う。 寄せて記念撮影でもしてくれるつもりだろうか。 言う通りにファイトを続けた。 一度タグを打つとマーリンが深く潜ってしまい、またその魚をあげるのは一苦労ではあるがそれがまた楽しくてファイトを続ける。
魚が寄って来る。
ジンボーがリーダーを取りマ-リンを寄せに掛かった。 その時、船の後方の海が一面真っ赤に染まった。 私は「シャークか」と尋ねるとビルが「ペラだ」と言う。
マーリンがスクリューに接触し、腹を切り多量に出血して死んでしまった。 タグアンドリリースしようと思ったものをアクシデントで死なせてしまい、とてもかわいそうな事をしてしまった。ポート・スティーブンス初めてのストライプマーリンは155LB(70kg)であった。


相原 元司






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