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SAURUS > エッセイ > 田中秀人 > 遙かなる我が飛騨の川 (3)
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Tokyo Rod & Gun Club
田中 秀人
ESSAY: Top Notch


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ボロングレーを手にして、ブラウニー11cmとラパラフローティングの11cmを入手した僕は、宮川でかつて何物かにおとりアユを盗られたあのガンガン瀬を目指した。




水彩のような山アジサイの優しい色合いに山々が包まれる頃。


信じられない、ものすごい光景が目の前に広がった。
50cmを超える巨大な本流トラウトたちが次々と水面を割った!
体が震え、ひざが笑い、涙と鼻水で視界も曇ってきた。


「これだ!本当にいたのだ!」


1日に何本もブラウニーをひったくられ、瀬の上流から背びれを出してブラウニーを押さえ込むやつまでいた。その当時は、パラダイスを独り占めしてしまった。1日に何本も50オーバーの大岩魚やレインボーをゲットした。


瀬の中で、ブラウニーで暴釣した話をしても、一緒に釣りをしている仲間以外は、にわかに信じてもらえなかった。ベテランの地元ルアーマンの中には「でかい岩魚は淵の底にいてスプーンなどで沈めて鼻っ面を通してやらないと釣れない。瀬で、ミノーでそんなでかいやつが何本も釣れるはずが無い。」と嘘つき呼ばわりさえされた。


僕と仲間たちは数年この状態を独占できたのだった。


今では、瀬の中でミノーを引くのは当たり前になっているかもしれないが、当時は(といってもたかだか10年ちょっと前の話だよ!)誰も信じなかった。そのときは投げて棒引きして、U字でクロスストリームさせるだけで釣れた。だんだん魚も賢くなり、トゥイッチングをかけたり、ディープダイバーを引いたりいろいろ皆が手を尽くすようになり、流れのミノーイングが変化していった。そしてその時代の先端を常にザウルスが、則さんが走ってきた。


沈めなければ釣れないと言われていた早春の本流大岩魚もブラウニーで釣った。


水温が低ければ瀬のフローティングは効き目が無いのか?
僕は2年間は水温が2度でもフローティングミノーだけを1年中引き倒した。馬鹿扱いされたがそれでも試してみたかった。臨機応変でフローティングが常に万能ではないことは確かだけど。人々の予想に反して思いがけない低水温でも大岩魚がブラウニーを襲った。
びっくりするくらいの結果を得ることができたが、実はさらに巨大なやつに完膚なきまでにやられ続けているのだ。思い出すだけで悔しくて夜眠れなくなってしまう。
本当にへたくそな自分自身に腹が立つ。




ブラウニーはボキボキに破壊され、フックは伸びる。
ラインブレークに、挙句の果てにロッドも折られた。
本流レインボーも68cmまでは瀬の中でとったけれどもあきらかに70cmを超えるやつには、敗北の連続だ。フックを強化するとスプリットリングがやられた、ミノーが破壊された。一つ課題を克服すると次の問題にぶち当たった。
ラインもシステムを組むようになり万全を期したがそれでも歯が立たなかった。ルーズドラッグで魚を泳がせて、暴れさせずにやり取りするのは尖った岩がごつごつと入っている宮川では通用しない。下って魚を追いかけても、すぐ岩盤のどんずまりになり、1段下の激流と巨岩にまかれて何本もやられた。


海外の究極のトラウト、スチールヘッドの名ガイドたちは巨大なマスを狙うのに太いナイロンラインを勧める。何故なのか、よく噛み締めて考えてみた。


そして師の則氏からビッグワンには絶対ベイトリールが必要だとの教えを受け、ベイトリールをまともに使えない状態から、いきなり2年間はベイトリールで自分を縛り、スピニングを封印した。
現在は状況によりスピニングも使うけれど、先人の教えを守り、新しい発想を持って進むうちに自然とベイトタックルにたどり着き、現在試行錯誤しているヘビーシンキングミノーを使ったクイックトゥイッチンにのめりこんでいる。


まだまだ完成したわけでも、完結したわけでもない。課題は山積みだ。
日々失敗を重ね、試行錯誤の連続が続いているし、無力さと失敗を繰り返す自分に腹が立つ日の方が多い。
則氏に出会い、現在は釣行を共にさせていただくことが増えた。
いまだに師の圧倒的な想像力と発想に驚かされ、おのれの経験不足を痛感する。


夢と課題が多いからやりがいもある。
ましてや流れのワイルドビッグトラウトは本当に強くて美しく、はかなく、愛おしい。
この魔力にとりつかれて一生のがれられないだろう。


則氏の「釣りは人を幸せする。僕はそう信じます。」との言葉がジーンとしみてくる。
しみじみと実感する。釣りに出会って本当に良かった。そして1匹のトラウトが本当の意味で僕を幸せにしてくれるってね。
全てに関し、何時も感謝、感謝の一念を忘れず、釣りを続けて行こうと思っている。


田中 秀人






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