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SAURUS > エッセイ > 山田周治 > 川の漁協の年中行事。鯉の放流が気になってしまった
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Tokyo Rod & Gun Club
山田 周治
ESSAY: Shuji Yamada


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川の漁協の年中行事。

鯉の放流が気になってしまった。

引っ越してきてすぐに、地元を流れている小糸川の内水面漁協に入れてもらった。まあ、僕も釣りをする人間の一人として、もしかしたら川でフナ釣りをするかも知れないからな、という気持ちがあったしね。

残念ながら、小糸川漁協の対象魚と遊ぶことはほとんどない。川とのつきあいは、源流域から下流まで、4ポイントで、年に3回ぐらい仲間と一緒に続けている、水質と水生生物の調査と、毎年の組合費ぐらいになってしまっている。

そんな横着な組合員に対しても、漁協からはきちんと年次の報告書を送ってくるのだ。いつもならぱらぱらとめくって、組合費のほとんどが放流事業に使われていることも、大して気に留めないで、綴じてしまってきたのだけれど、今回は、「鯉」の1文字が喉に刺さってしまった。


いや、ほんとうは、放流という事業そのものが、気にならなければいけないんだよね。

なぜって、本来その川にいた魚が少なくなってしまったから、わざわざ放流するんだし、あるいは元はいなかったのだけれど、遊漁対象として、放流する魚もあるわけだ。とするとこれは間違いなく、移入ということになる。つまり、その川にとっては外来魚が入ったということになるわけだ。

小糸川の場合、鮎はもともとは天然遡上していたのだ。それが、ダムができたり、堰ができたり、なによりも生活排水や農薬が流れ込むようになって、上がってこなくなってしまったから、放流することになった。ま、これも問題がなくはないのだけれど、いまは措いていておく。

鯉。これがモンダイ。

日本中のあちこちの民話や昔話にも、鯉は必ず出てくるし、掛け軸なんかでも鯉の滝登りはいちばんお馴染みの画題になっているくらい、日本人はこの魚に親しんでいるし、多分好きなのだろうね。


だからといって、この魚がいまのように、日本中の淡水のあるところすべてに、最初から棲息していたわけでは決してない。

見栄えがいいし、大きくなるし、丈夫なので、行政が公園の池や人造湖なんかに入れたり、内水面漁協が格好の釣魚として入れてしまったりして、どこにでも棲むようになった。ことに水を利用する企業などは、排水のきれいさや安全性の証として、鯉を入れる。

そう。鯉はたいていの場合、その水環境にとっては外来魚なのだ。しかも、鯉以外にほかの魚がいなかったりしたら、もしかするとその水が、きれいな水どころではなく、汚れた水の証拠かも知れないのだ。

そしてモンダイは、こいつの食性。雑食で、水草、ミミズ、昆虫、エビ、カニ、貝類、他の魚の卵、小魚。なんでも食べてしまう。しかも食欲旺盛と来ている。食害を起こすという点では、バスやブルーギルにも引けを取らない、といっていいだろう。

いや、水生植物を食べてしまって水の浄化を妨げてしまうことを考えると、単なるフィッシュイーターよりも、害が大きいといっていいかも知れないのだ。


山田 周治






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