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SAURUS > エッセイ > 田中秀人 > 2005年 鮭川釣行 (2)
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Tokyo Rod & Gun Club
田中 秀人
ESSAY: Top Notch


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この時期の鮭川の日中はすでに蒸し暑いくらいだった。

梅雨前だけに湿度があって朝夜はモヤがかかる。今日の相棒はいつものメンバーに加え仙台の西村氏である。言わずとしれた、鮭川の事を隅々まで知り尽くしている、スペシャリストである。本日は彼のナビゲーションで鮭川の攻略に向き合う。



事前情報通り状況はあまり良くない。ここ数日ぽつりぽつり釣果は聞かれるが、今一つの状況である。昨日も西村氏の後輩が1本仕留めてはいるものの、渇水気味の状態で魚が動いていない。さらにマンプレッシャーの影響で活性が一気に下がっている悪条件。追い打ちをかけるように天気はドピーカン、水位は昨日より更に5cmほど下がっている。今日のプラッギングは相当知恵を絞る必要がありそうだ。


朝一に超A級ポイントの瀬に入る。この渇水であれば瀬のスリットにやる気のあるサクラマスがきっと入っているはずだ。尖った岩や、障害物がごろごろしている。こうしたポイントでサクラマスに走られラインブレイクしたり、スリットに入られたりと何度も失敗している難易度の高いポイントでもある。今まで何度痛い思いをし、涙したことか……。


しかし、予想以上の低水位でフローティング ミノーですら障害物に根掛かりしてしまう。


西村氏も私も数本ミノーをロストした末にバイトは無い。仕方がない、作戦を変えよう。
超低活性の口を使ってもらうためにミノーをサイズダウンして、更にトゥイッチングのピッチを細かくしてみよう。こういう条件で有望なのは、ある程度水深があって、障害物が入っていて、水通しがよく水中にカケ上がりがある場所ということになるだろう。
大淵にいるサクラマスはこの状況では反応しないことが多い。じゃあどこ? この状況で当てはまるポイントがどれだけあるのか? 不安がよぎる。西村氏の経験でポイント選びを進める。チャンスがあるポイントはそう多く無さそうだ。


しかし幸運をつかむまでに時間はかからなかった。まさにトロ瀬がかけ上がるそのポイントで本日1本目のサクラマスが私のCDレックス7cmに食ってきた。
メッソッドはここ数年、私が試行錯誤してトライしているクイック・トゥイッチング。クロスストリームに着水後すぐにトゥイッチングをかけながら表層をスイングさせる。アクションの途中で少しミノーを送り込み10cmだけ沈ませてやる。沈みながらミノーがヒラを打つ。バイトポイントに差しかかって抜けようとする瞬間、「パシ、パシ、パシ、パシ、パシ」。5発目の強いトゥイッチを加えた瞬間にサクラマスは反応した。
プレッシャーと減水を考えミノーのサイズは7cm、カラーは光りすぎない金黒をチョイス。激しくミノーにアタックしたサクラマスは、やや小ぶりだけど特有の下に下がりながらのローリングを見せている。クイック・トゥイッチング専用シャフト、ZYシャフト・リンクス71Hクイック・トゥイッチンは、しなやかに強くこの動きを吸収し流れの芯から手元に宝物を届けてくれる。小ぶりだけど良く引いた。47cmの可憐な砲弾型の貴重なサクラマスが手に収まっている。


「やった!ありがとう!」


この瞬間に、辛いことも、嫌なことも、疲れも遠路も、この喜びを噛みしめるためのお膳立てに全て感じてしまう。
この美しい宝物に惹かれて水辺に通い続ける進歩の無い釣師は、一つの出会いによって全てから解放される。この日の状況ではサイズのことで文句を言ってはいけない。


それ程に蒸し暑い、初夏の一日であった。


田中 秀人






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