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SAURUS > エッセイ > 田中秀人 > イトウ愛とカムイの大河 (3)
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Tokyo Rod & Gun Club
田中 秀人
ESSAY: Top Notch


第1話 | 第2話 | 第3話
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~ イトウ愛 今からここから…



僕らは永遠のイトウ釣り師だ。いつまでもこの釣りを続けられるようにさらに考える時期がやって来た。


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道北の猿払イトウの会は、紳士協定で完全なるリリースと、5月中旬までは上中流域でのイトウ釣りの禁止。夜間のイトウ釣りの禁止。朱鞠内湖ではライセンス制とレギュレーションの策定。かなやま湖でも支流の禁漁期間やイトウの保護。尻別川 おびらめの会では種親を保護してのイトウの増殖活動。
道東でも多くの団体がイトウの保護に取り組んでいる。
その他にも活動は様々に広がっている。すべて紹介しきれないので申し訳ない。こうした活動の一部は下記のHPを覗いてみて欲しい。

≫ イトウ保護連絡協議会



このままではイトウ釣りができなくなる。
いつまでもイトウを釣りたいとの思いから始まった有志の運動で、さらなるイトウ愛が語られるようになった。道北の猿払ではその効果が近年現れ始めた。明らかにイトウの数が増えて、年々釣れるイトウのアベレージサイズが上がっている。
頭が下がる思いだ。
30年前のように剥製にしたり、魚拓を取ることはもう許されない時代に来ている。完全リリース、それも元気にイトウを流れに返すリリースが必然となる。
ここからは自論になるので決して押しつけではなく、単なるお願いにしか過ぎないのだが、最悪リリースが出来ないようなダメージがあっても僕ならばこうする…。
例え血を噴いて命耐えても、川に返す。その体が朽ちて虫が湧き、小魚が育ち、次世代のイトウの餌となり、その流れに命が還元してゆく。僕にとって、間違っても死んでしまったからの理由でキープすることは許されないのだ。
写真を撮り計測だけして、あとは脳裏に刻めば剥製も魚拓も必要がない。それよりもその子孫を何年か後に釣るかも知れないと想像したらソワソワするじゃないか。殺してしまったらそこで関係は絶たれるが、健全にリリースすれば永遠に僕とその川は繋がっている。日常の営みの中で雑踏に紛れていても、僕にはその夢がいつも傍にある。増殖も放流もない完全無欠のネイティブであるあの川には、その夢と誇りがあるのだ。
これからは規制のない河川でもモラルが必要になってくると思う。イトウの産卵期3月~5月中旬は、レギュレーションや紳士協定がなくても、中上流域でのイトウ釣りはやめようと思う。


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釣友のTOKYO ROD & GUN CLUB 岩井 淳利がこう言った。
「イトウを釣りたい人はたくさんいるけど、イトウに優しい人は少ない。」
微力な僕には、なす術もない。だから先ずは自分がその思いを実践したいと思う。



そしてシンプルに釣り師として思うこと…。
メーターオーバーという生涯の夢を達成した今。
「イトウが釣りたい。さらにでかいイトウを釣りたい。」
激しい思いがさらに湧き上がってきた。憧れを手にして荒ぶる自分がいるかと思ったら、以前にも増してイトウへの愛と憧れが強くなっていった。カムイに触れ、人によっては納得し、あるいはそれぞれの深い思いがあって、イトウ釣りから離れる釣り師もいると聞く。しかし僕は何があってもやめられないと思った。
本当に自分はイトウ釣りが好きなんだと再認識した。来年もあの流れに間違いなく立っている、その姿を想像するに疑いはない。


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イトウを守りたい気持ちとイトウを釣りたい思い。矛盾はわかっている。
でも僕はイトウを釣りたいんだ。いつまでもイトウ釣りを続けたいんだ。あらためてその強い思いと、イトウを愛する激しい願いが錯綜する自分に気づいた。

50年経って、僕の孫や子孫があの大河を訪れたとき、あのメーターオーバーの末裔(まつえい)は悠々と泳いでいるだろうか。さらなるメーターオーバーが潜んでいるだろうか。厳しく青黒く果てしなく重いあの流れは続いているだろうか。
己の命いつか朽ち果てても、あの流れが僕の生きた証だと…。
時代を越えてイトウが命を繋ぎ、いつまでもイトウ釣りができますように…。



2014年 新年 さらに深いイトウ愛に目覚めた。
(完)


田中 秀人





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