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SAURUS > エッセイ > 則弘祐 > ベイトキャスター同志たちへ (1)
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ザウルス・スーパーバイザー
則 弘祐
ESSAY: Hirosuke Nori


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ESSAY TITLE




釣り師であれば同じ種類の魚であればより最大級を狙いたい。それはカジキでも、ニジマスでも、サクラマスでも同じだと思う。僕は間違いなくそう思う。
でも、大きな魚は偶然では決して捕れない。ロッドも、ラインも、ルアーもそれに応じて準備しなければ決して偶然では捕れない。そのことはもうベテランの貴兄だから知っていると思う。
一匹の魚とどう関わりあうか? 一生に一度の魚とどう渡り合うのか? 何匹釣ったではなく、どう釣ったのか? そこにこそゲームフィッシングの答えがあるような気がするのだ。単独で、無酸素で、しかも未登峰ルートを目指す登山家のその精神と同じものを感じるのだ。


こんなことがあった。
その時、僕は富山県、神通川にいた。

その場所はもう禁漁になってしまった大沢野橋の上手。と聞けばアドバンスドアングラーの貴兄なら「ン!?」と顔を上げるに違いない。
そこは屹立した岩盤。その崖に流れの中心がもろに当たって絞れている。だから流れの芯はまともに強く重い。その流れの渦は、大きな岩を抱き込みながら下流に開けていく。ちょうど梅雨に入ったばかりで緑が濃い。
僕は橋の下から岩盤までヤブをかき分けながら直下までたどり着いた。
ブラウニー13cm、オレンジベリーを投げる。
ロッド、ユーイフェクツ82H。ライン、シーザウルス・プラッギン10Lb。ショックリーダー20Lbを2ヒロ。

崖の真下から釣り始める。

流れは相変わらず強く、おまけに足元がゴロタ石だからよけいに始末が悪い。危なくてヒザ以上は入れない。難易度Aクラス。でも困ったことに自分はこんな場所が大好きなのだからしょうがない。
人と並んで魚が通るのを待って釣る。
「そもそもルアー釣りとは活性の高い魚を積極的に捜して釣るものだ。そこがエサ釣りとの大きな違いのひとつだ」。天才、開高 健さんから大学生のころ銀山湖で聞いた話がいつまで経っても頭からこびりついて離れない。それが僕の釣りの原点になっている。

斜め上流に向かってブラウニーが飛んでいく。

ここは水深が少しあるからミディアムディープ9cmに換えるところだ。でもその下流に大きな石が沈んでいるからそのままでも……。
定石通り、ブラウニーが自分の前に来る直前に、ミノーの頭が上流に向く直前からピッチの早いストロークの強いトゥイッチングを入れる。これはもう自分のクセのようになって体がそのタイミングを覚えている。
「ゴンッ」
いつもそうだ。
「ゴクッ」「ゴクッ」。頭を振っている。
これもいつものことだ。

それからが違った。さっきの大岩の蔭に入って動かない。数歩下流に下ってロッドをたてる。強くアオる。
案の定、マスは出て来た。そしていきなり下流へ走った。
「チー!」。2kgセッティングのドラッグから悲鳴のようにラインが出ている。熱でドラッグが馬鹿になったら万事休す。さてどうするのか!

こんなとき、つい下流に一緒に下りたくなる。とくに自分のタックルのシステムに自信がないときはそうだ。ここで下ったら最悪、一気に走られてその先に強い瀬が待っている。
両手でロッドをホールドして、ただ耐える。
情けないことに息が上がって、心臓が口から出てきそうだ。
すると今度は一気に上流に向かって走り出した。そして走ったままのスピードそのままに僕の目の前で跳んだ。ピンクの砲弾、川のヒラマサが跳んだ。

「デッ、デカイ!!」

いままで九頭竜川で釣った最高70cm、5kgをはるかに越えている。太くそして巾がある80cm、7kgは間違いないだろう。目玉も一円玉の大きさ以上に見えた。その目で僕を見たのだろう。それから本気になった。ターボが掛かった。もう、ケンカにならなかった。さんざん引きすり回された揚句、根ズレで切れたメインラインだけが力なく風に揺れていた。完敗だった。

ビッグフィッシュは偶然では取れない。

とくに岩の多い場所や流れの強いトロ瀬の大好きな僕たちにはなおのことだ。
ビッグトラウトをバラすたびに思ったものだ。
「ビッグトラウト専用のベイトロッドが欲しい、スピニングでは限界がある」。
そんな僕と同じ地平を見ている貴兄に。
ベイトキャスター同志たちに。
このZYシャフトを贈ります。

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則 弘祐






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