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SAURUS > エッセイ > 則弘祐 > ベイトキャスター同志たちへ (4)
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ザウルス・スーパーバイザー
則 弘祐
ESSAY: Hirosuke Nori


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ESSAY TITLE



僕が初めてベイトリールを買ったのはいつだっただろうか。


少し古い話をさせて下さい。



神奈川相模原の米軍基地のアメリカ兵たちと釣りをするようになった僕は、当時浪人中だった。バス釣りを覚えたばかりでルアー釣りに夢中になっていた。
それでなくてもそんなに成績の良くなかった自分はエスカレートで大学に進学できる付属高校にいた。だからそのまま行けばその大学に入っていたと思う。
ところが大それたことに生意気にもその大学に疑問を感じ別の大学を受けた。70年安保、大学が紛糾していた時だ。
結果は当然に目指していた大学はすべて不合格。付属高校のレベルの低さを思い知らされた。というよりは何と自分の頭の悪さよ……。

そして浪人生活が始まる。
で、始まると考えるのはもちろん釣りのことばかり(分かってくれるよね)。しかもおぼえたばかりのルアー釣り。それはいままでのエサ釣りになかった面白さ。たとえばキャスティングのこと、さらにプラグの名前や種類、動きやカラー。そんなことが頭の中をグルグル回って勉強なんてとても手につかない。キミと同じだよ。
さらに英語の勉強にと自分に理屈をつけて、チャーリー(僕のバス釣りの師匠)からもらった野外雑誌を辞書を引きながら読むのはいいのだけれど、目に止まるのは美しい写真や道具の広告ばかり。こりゃダメだ。

それはそれとして、中でも目を引いたのが『ヘドン』『シェイクスピア』『フルーガー』『サウスベンド』などのウッド製のプラグ達だった。そうその頃はプラスチックが大勢を占めていて、それでもフルーガーやサウスベンド、シェイクスピアはほとんどウッドだった。

「TOPWATER PLUG」
そのわくわくする言葉が巻頭をかざっていた。

トップウォーター。サーフェースウォーター。水面……。夢はどんどん膨らんで、羽が生えてどこかへ飛んでいきそうだ。
とりわけ、夜も眠れないくらいに気になったのが、フルーガーなどのアメリカのリールだった。そしてそれはスピニングではなくベイトリールだった。と言うよりはアメリカ製はベイトしかなかったように思う。
わけてもその中でガツンときたのがアルミボディーのアメリカ製でなくブラスボディーで黒く輝くガルシアのアムバサダーだった。


5000C。曲線と直線をたくみに組み合わせたアールデコ調のそのデザインの美しさ、 開高健をして言わせしめた。“時計の精巧”さ。アムバサダー=大使というネーミングの上手さ。
ちょうどアルミボディーで軸受けがブッシングからボディーがブラス。スプール受けがベアリングになったばかりでアブの販売に力を入れていたのだろう。広告も派手だった。


5000カスタム。僕にとってもそのリールは別格だった。寝ても醒めても頭から離れない。
僕はそのリールを使う自分を想像した。
オレは難しいと言われるベイトをマスターする。上等じゃないか!! オレは日本で初めての両軸使いになってやるッ。
350ドル。ぐらいだったと思う。
1ドル360円。僕は勉強などせずに一生懸命バイトをした。1日600円~650円。1時間じゃないよ。1日だよ。でもしかし、僕はこんなに真面目にバイトしたことは無かったよう気がする。
そうして雑誌に出ていたアメリカのアウトドア用品専門の通販の会社のカタログを請求した。でも、こんな熱意は勉強では決してしないよね。釣りの為ならなんでも出来る。数ヶ月して茶色の封筒に入った外国からの郵便物が届いた。待ちに待ったカタログだった。


則 弘祐






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