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SAURUS > エッセイ > 則弘祐 > ベイトキャスター同志たちへ (3)
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ザウルス・スーパーバイザー
則 弘祐
ESSAY: Hirosuke Nori


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ESSAY TITLE



パラノイアを知っていますか。


「パラノイア。
知能や人格に障害は見られないが、論理的には筋の通っている妄想を常に抱いている病気。(国語辞典・講談社)」

パラノイアの典型がドン=キホーテ* と言われているけど、はたして僕たちはどうなのか。
僕たちが立ち向かっている相手、ビッグフィッシュはドンの風車なのか……。


相原 元司という男を御存知だと思う。
そう、あの2ポンドラインで100ポンドオーバーのカジキを釣った男だ。
何とラインテストの50倍以上。もちろんこんな快挙は偶然にできたわけではなく、世界的に有名なキャプテンを1年以上前からその日のために予約する。しかもボートはただひとりでチャーターする。釣りに集中するのと、釣り上げるのに時間がかかるからだ。同伴者がいればそれだけ相手に迷惑をかける。だからこそ彼は準備に準備を重ねての結果なのだ。
アングラーの勲章である。
世界に通用する数少ない日本人と僕は確信する。


で、しかし彼がそんなことができる大金持ちなのか。
とんでもない。相原は東京都府中市の職員で、妻も子もいるフツーの男である。
人生、心意気に感ずる。


この男の釣りを見ているとそう感じざるを得ない。できる限り魚と対等に、釣りの相手は魚とそして自分自身。
そして彼はこう言う。


「つぎはマーリンだ。取ったのはセイルだからマーリンだ」


と笑う。バショウだって凄いのに……。

前のエッセイで、無酸素で単独でエベレストに命を賭けて挑む登山家のことを書いた。
相原はそれに通じないか。僕にはそう思えてならない。
それにしても、と考える。
ルアーのカラー、動き。どうしてそれにゲームフィッシュが反応するのか。


  「夢想」「空想」「幻想」「想像」「妄想」


僕たちはパラノイアなのか。
釣りとは見果てぬ夢なのか。
空想的で正義感の強いドン=キホーテなのか。
ビッグフィッシュ・ゲーマーたちへ。
ベイトキャスター同志たちへ。



則 弘祐


* ドン=キホーテ:スペインの作家ミゲル・デ・セルバンテス・サアベドラの小説「ドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャ」の主人公。当時のヨーロッパで流行していた騎士道物語を読み過ぎて妄想に陥った主人公が、自らを伝説の騎士と思い込み、「ドン・キホーテ・デ・ラマンチャ」と名乗り、痩せこけたロバのロシナンテにまたがり、従者サンチョ・パンサを引きつれ遍歴の旅に出かける物語。






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