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SAURUS > エッセイ > 則弘祐 > ベイトキャスター同志たちへ (6)
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ザウルス・スーパーバイザー
則 弘祐
ESSAY: Hirosuke Nori


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長い梅雨がやっと明けました。と思ったとたんいきなり真夏が来た。
アジー(谷岡ヤスジ!! 古いなぁ)。
待っていた夏空に入道雲が湧き上がっていて真夏になった証拠なのだろう、セミの声に混ざって鳴いていたホトトギスの声がもうない。

さて、こんな夏の休日どう気分転換をするか? 冷たいビールで? そう、それもあるけどどうも面白くない。
まず、トワイライトに間に合うように早めにシャワーを浴びて、僕は当然カクテルだ。
マグナムのシェイカーにアイスをたっぷりと入れて、ジンはゴードンの47°でなければならないし、さらにキレを良くするために3分の1ウォッカ。ノイエプラヤのドライベルモットを香り付け程度に少々。トニリダード・トバゴの名品、アンゴスティラビターを多目に5ダッシュ。普通ドライマティーニと言うとステァするのだけれど今日の僕はシェイクして急激に冷やしてサラダオイルのようなトロトロのやつを飲むつもりだ。勿論オリーブは大粒な種付きのホールでね。
熱いシャワーから出て、クーラーの効いた部屋の窓を全開にする。
とたんにヒグラシの大合唱が飛び込んでくる。 キンキンに冷えたマグナムサイズのカクテルグラスにベリィー・ドライなマティーニをゆったりと注ぐ。

で、次に、 オーディオのスイッチをオンにして、パッシブアッテネーターのヴォリュームを10bB。
一番真上だ。トゥエルブ・オクロック・ハイ、「頭上の敵機」なんちゃってね。(古いなぁ)
さて、何を聴くかって、 こんな気分のときは決まっている。
モダンジャズだ。 ハードバップだ。
では、誰だ……。


今年は大雪の影響でトラウトは惨々だった。
新潟や山形のサクラマスの川も、北海道のイトウの川も、おまけにロシアまで大増水……。
地球が何だか変だ。いつも自然と接している僕たち釣り人だから余計その思いが強い。やはり温暖化のせいなのか。
ただ成果もあった。僕たちの今年のテーマのひとつにしたビッグトラウト狙いのカウントダウン(CD)ミノー。結果は思った以上だった。サクラマスにせよイトウ、ヤマメにしてもこれだけビッグトラウトのファンが増えてくると皆と同じことをしていたのではなかなか思うようには釣れない。
釣れない理由はいくつもあると思うけれど、まずミノーに原因があると思う。

曲者は重心移動のノイズだ。
特に本流の場合、1メートルでも遠くへキャストしたい。これは誰でも思うことだから、どうしても重心移動のミノーを多用するようになる。問題はそのノイズだ。 たとえばミノーの動きをチェックするテストタンクで試してみるとフックがボディーに当たる音と重なってかなりの音がしていることが判る。
このコロコロ、ガチャガチャ・ノイズが取っ替え引っかえ、沢山の釣り人が入れ代わり立ち代りしていることを想像してみて欲しい。そして同じように沢山の渓流のことを知らない人たちが音を立てて腰まで川に立ちこむ。これでは魚をわざと散らしている……僕にはそう思えてならない。だから魚たちもかなりナーバスになるだろう。学習もするだろうと思う。


これと同じことがバスのトップウォーター釣りにもある。
このことは次の機会に詳しく書くけれど、たとえばもうバスはエレクトリックモーターの音を覚えていて、その音を聴いただけで警戒モードに入る。フロリダのターポンのストーキングもエレクトリックではなくプッシュポールを使うのも同じ理由らしい。さらに言えば、過日改めて七色ダムで7センチのブラウニーを使ってバスのIQを試した。
ところが驚いた事に小バスであってもローリングやウォブリングを見ただけで見切ってしまってUターンしてしまう。ハリの痛さを知らない小バスまでそうだ。ミノーの動きを学習している。もうそれ以外考えられない。
ミノーは危険なモノ。それは親バスからその教えをDNAとして引き継いでいる。ミノーの動きは危険信号。独断的だけれど僕にはそう確信した。
とは言ってもだからこそフィッシュイーターは釣って面白い。
フードチェーンのピラミッドの頂点に立つ魚だからこそ賢く、そしてだから釣って面白いのだ。


CDレックスのこんな実験をした。場所はロシア・コッピ川。いかにビックトラウトはすぐスレるのか。その実証。
CDレックスの効果について。(何だか夏休みのレポートみたいになってきたぞ) その場所は僕の好きなトロ瀬が連結する実績のある場所だ。

ロッド=クイックトゥイッチング 7'1"
リール=アムバサダー6500Cロケット
ライン=16ポンド+ショックリーダー30Lb
今年は魚のランが遅れていて数が例年の半分以下だ。
まずロシアの定番 MD 11センチ。30メートルを釣り下る。釣果2本。すぐに基に戻り釣果ゼロ。
また戻り、ダウンサイズ9センチ MD、1本。
また戻り、釣果ナシ。
また戻り、CDレックス 8.5センチ、2本。
また戻り、川を少し休め1本。
また戻り、釣果ナシ。
また戻り、CDレックス 7センチ、1本。
また戻り、釣果ナシ。
また戻り、ヴィブラ 8.5cm、1本。
以下釣果ナシ。


このようなこんなテストが出来るのもロシアならではなのだけれど、ロシアであっても魚はすぐスレて釣れなくなり、でもしかし深度やルアーのサイズを替えればまた食ってくる。 つまりいても食わない。

こんな話がある。
サクラマスは我々が思っている以上にいるのではないか、そんな会話のなかで友人のひとりが
「オレ、潜って見てくる」
と言って後日、早春の淵にウエットスーツにボンベを背負って実践した。 「大岩の陰に頭だけ突っ込んで尾を出して隠れていた」 「護岸に銀色に光って張り着くようにいた」 そう多くは無いけれど想像以上にいる。
それが彼の結論だった。


でもいても食わない。
どうしてなのか?
なぜなのか?
バスだってそうだ。 以前のように僕が言っていた「トロトロ、ポチャン」では寄ってくるどころか散ってしまう。「ストップ&ゴー」では食わない。「ストップ&ストップ」だ。「スローリー&ステディー」ではなく「ステディー&ステディー」だ。 そこにいても食わない。


40年以上もバス釣りをしているのに判らない。
どうしてなのか?
なぜなのか?



アート・ファーマー(tp)の「モダン・アート」をチョイスする。
ベリィー・ドライなマティーニを一口。いきなり胃にガツンときて、鼻に香りが逆流する。ビターの苦さがなんだか頭のてっぺんから一気に抜けている気がする。 ガツンと来るのはマティーニだけではない。アート・ファーマーとベニー・ゴルスン(ts)のインタープレイが凄い。コンデンサーもケーブルも純銀線化し武装強化したJBL4343が唸りを上げる。


何でアート・ファーマーなのか。
何でハード・パッブなのか。


気分です。理由はありません、という気分。それはまったくトップウォータープラグの選び方と似ていて、それは気分、そして雰囲気。
この気分、トップウォータープラッガーなら判ってくれると思う。
このアート・ファーマーの「モダン・アート」というアルバムタイトルは僕の知る限りアート・ヘッパー(as)とシリーズで出たズート・シムス(ts)だけれどこの時代だからこそ何ともアートという言葉が新鮮に感じられる。 「モダン・アート」が録音されたのは58年。だから僕は11歳の鼻タレ小僧だ。キミはたぶん影も無い……。


面白いことにこのアルバムは白人ピアニストのビル・エバンスが参加していて、ビル・エバンスファンには申し訳ないけれど黒人の中のただ一人の白人のせいかガチガチに上がっていて追いつくだけで精一杯だ。
さらにビル・エバンスと言えば翌年59年録音の銘盤、マイルス・デビスの「カインド・オブ・ブルー」では可愛そうにマイルスのウタバンをさせられている。 とろがたった2年後のキャノン・ボール・アダレイとのクインテット「ノウ・ホワット・アイ・ミーン」ではもうすでにビルのスタイルを作り出していてビル好きの僕としては、ただただその変身振りにジャズプレイヤーとは凄いなと思わずにはいられない。才能とはそう言うものなのか。 ついでにアート・ペッパーの「ミーツ・ザ・リズムセクション」この銘盤も当時、最強と言われたマイルス・デビスのリズムセクション、レッド・ガーランド (p)ポール・チェンバース(b)、フィリー・ジョー・ジョーンズ(ds)に白人のアルト吹きがたった一人で挑むと言う具合でそれはまさに真剣勝負といった感じ。ところが最初の出だし、アート・ペッパーはもたついているのだけれど、だんだんアートのアルトサックスが鳴り出して、終いにはアート・ペッパー自身が鳴り出したような錯覚に陥るような名演奏で凄い一枚になった。


さてドライマティーニの後は何を飲むか。
薩摩のイモも悪くないなぁ。


ベイトキャスター同志たちへ (完)


則 弘祐





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