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SAURUS > エッセイ > 田中秀人 > 宮川 プラッギング・レポート (1)
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Tokyo Rod & Gun Club
田中 秀人
ESSAY: Top Notch


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昨今の異常気象が叫ばれる中、飛騨の気候と自然にも沢山の影響が感じられる。
ここ数年の大水害、この冬の記録的な暖冬のなか異常なまでに少ない積雪。災害と河川改修、ほとんど雪代が出ないなんて過去経験したことのない流れだ。果たして僕の大切な渓の友人達はたくましく生き抜いているのだろうか。
不安と危惧の念に支配され今シーズンを迎えたのであった。魚の数も、ポイントも激減している中で過去の良き宮川のページを思いながらこのシーズンを綴ってみたい。




ネコヤナギの蕾もまだ硬い3月初旬、渓春の宮川支流エクストラライト・ゲームにてネイティブ尺イワナに出会った。
3月飛騨の渓が解禁を迎えると、超低水温の中、長い冬を乗り越えた愛しの渓魚たちに半年ぶりに出会うことが出来る。
僕にとって本音の部分でお正月を迎えることが出来るのだ。


3月も2週目に入りようやく時間を割いて飛騨の渓に立つ事ができた。
本流を覗いてみるが、流芯には重機が居座り、これでもか、と河床をかき回しもの凄い量の泥にごりを清流に送り込んでいる。
怒りと悲しみの中、狙いの本流エリアは手も足も出ない。昨日からの雨による増水もあって、支流を目指すことにする。
本流を狙うことが多いが、今日のような状況や真夏の源流、秋の遡上シーズンなどは支流域でウルトラライト・スピニングを楽しむことも多々ある。


今日の選択はUL、ウルトラライトよりさらにライトな新発売のボロントラウトスピン46EULS、エクストラ・ウルトラライト。
ショートでしなやかなんだけど、驚異的な粘りがトラウト達とのやりとりを究極に楽しませてくれる。流れのネイティブな尺上トラウトのパワーをしっかり楽しめる。さらにパラボリックなアクションは軽量ミノー使用時にとてもキャスティングがしやすい。話題のパーム・イン・グリップはすっぽりと手の中に入るスーパー・ショートグリップで、手のひらに全て伝わる感触と、テクニカルなファイトを可能にする、まさに1匹の魚とのファイトを徹底的に楽しむ大人のためのロッドなのだ。

相棒のミノーは、渓流で無敵のTy-rex 5cmと7cm。
全国に潜んでいるウルトラライトのスペシャリスト達が、待ちに待って、熱望の末に復刻を果たした名作ミノーである。流れの中での安定感は抜群であるのは当然、複雑な流れの変化にも一瞬のタイムラグも無く反応してくれる。
そして、タイトローリングアクションからトゥイッチングへの反応は他の追従を許さず、艶めかしいキラメキでネイティブを激しく誘う。
さらに、食い渋ったとき、激流、チェイスするけれどバイトしないときなどに、流れの王道、ブラウニー5cmと7cmを加えれば完璧だ。
渓流における無敵のマッチングシステムを手に支流に入った。


増水しても、支流郡の中で最も早く濁りがとれる渓を選んだ。ところがどうだろう。予想はしていたけど余りにも異常な光景が広がっている。通常なら2メートルは残雪が有ろう場所で、積雪ゼロの川岸が続いているのだ。水温は6℃と3月ならではの低水温だが残雪のほとんど無い早い春に魚たちの活性も上がっているに違いない。


通常は釣り上がる規模の渓流なのだが、増水と低水温のため出来るだけミノーを長く見せたいとの理由から、釣り下ることにした。
入渓してからすぐ、思った以上に元気な渓の友人達が答えてくれた。20cm強の良型ヤマメやアマゴ、アクティブな岩魚たちが顔を見せてくれた。ここぞと言うところで誘ってやると、必ずと言っていいほど反応がある。テンポ良く答えてくれる友人達に気分を良くする反面、こんな初期からこれほど反応が良くて本当に良いのだろうかと逆に不安もよぎってしまう。

トゥイッチは強く、キラッッ、キラッッ!とフラッシングアピールを意識してネイティブを誘う。私の場合、ごく初期でも強めのトゥイッチを心がけている。
手つかずの渓魚たちは、次々とTy-rexを襲う。いくら活性が上がっているとはいえ、改めてこのミノーのポテンシャルには驚いてしまう。ほんとうによく釣れるミノーだと今更ながら実感してしまった。


本日のクライマックスはベストコンディションの、尺上、ネイティブ岩魚。一抱え大の絶好の石が沈む複雑な瀬の開きにて、キラ星のようにフラッシングするTy-rexをガッツリと襲った。早春なのにここまで元気なのは暖冬のなせる技か、とにかくよく引いた。必死に石のえぐれを目指す尺イワナをボロンシャフトがしなやかに受け止める。

チチッッ!

少しドラッグを鳴らし一瞬ヒヤリとさせた後、身体をよじりながらに僕の手におさまった。錆もなく丸々としている。くりっとした愛くるしい目が春の訪れを元気に告げてくれた。




「うわー、綺麗な岩魚だ!」

小渓流でエクストラ・ウルトラライトのシステムで楽しんだ尺イワナは、とてもエキサイティングで優しく僕を幸せにしてくれた。 皆さんも、エクストラ・ウルトラライト・シャフトとTy-rex、ブラウニー 5cm、7cmでのマッチングシステムで尺物を狙ってみませんか。最高に楽しいですよ。


こうして、飛騨の開幕を迎え、支流の良いトラウト達が本流のスーパービッグをはぐくむ秘密なのだと実感した良い1日だった。 ただ、どうしても気がかりな点がある。積雪ゼロ、雪代ほとんど無し。雪代どころかこのままじゃ盛期を迎える前の4月には渇水してしまう。 大雪は大気中のミネラルや養分を大地に川に運んでくれる。雪が降る分の量、雨が降れば良いという物ではない。有名な穀倉地帯の富山平野も新潟の米どころも全てが豪雪のミネラルが支えている。 養分たっぷりの雪代は渓に潤いをもたらし、多くのプランクトンや水生昆虫や小魚をはぐくむ。全てがつながって豊かな川になって行く。過去の経験でも豪雪の後、もの凄い雪代が出た年ほどビッグトラウトは当たり年で有った。


山も養分が不足し山の幸から農作物まで影響が出る可能性が有る。取り越し苦労で有ることを祈って、今日は愛らしい渓魚たちとの出会いの時間に浸ってお気に入りの一本に手を付けようと決めた。


そうなると、もう人格が変わりそうだ。早く我が家に戻ってボトルを選ぼう。こんな日は黄金に輝くシャルドネを選ぼうか。そそくさとタックルをしまい込むと急いで家路につく、食い意地の張った腹ぺこ小僧に戻ってしまった。

「あー、春が来た。今日はお正月だ、感謝、感謝。」


田中 秀人






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